目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第60回 牛乳1日10cc運動

目玉焼きによく使われる調味料のベスト5が分りますか?(2008年)
1位醤油(目玉焼きにかけられる割合が37%)
2位塩(20%)
3位ソース(7%)
4位トマトケチャップ(4%)
5位マヨネーズ(2%)
圧倒的に醤油がかけられています。塩が2位、ソースが3位です。私はマヨネーズ派ですが、マヨネーズがかけられる割合は僅か2%です。上記から漏れましたがドレッシングも2%弱です。

冷奴にかける調味料のベスト5は次の通りです。
1位 醤油(62%) 2位 ポン酢(12%) 3位 めんつゆ(9%) 4位 キムチ・ザーサイ(3%) 5位 ドレッシング(2%)
やはり醤油が圧倒的です。冷奴は味噌汁ほど登場回数が多くありませんが、食卓によく登場する料理です。最近、卵かけご飯用の醤油が売場に登場しています。冷奴や温奴に相性の良い醤油を開発するとヒットしそうです。

旅館の朝食では納豆に卵は定番です。では自宅の納豆に卵を入れて食べる割合はいくつだと思いますか?
わずか5%です。家庭の食卓では納豆に、卵以上に海藻類がよく使われています。青海苔、芽カブ、焼き海苔を併せると6%です。納豆に使われる野菜のトップ7は分りますか?
1位 長ネギ 2位 万能ねぎ 3位 ごま 4位 青しそ 5位 オクラ 6位 かいわれ・スプラウト 7位 みょうが
長ねぎは23%、万能ねぎ6%、ごま、青しそ、オクラはそれぞれ2%の割合で入っています。変り種ではトマトやモロヘイヤ、ほうれん草が納豆に入っています。野菜を合計すると4割の割合で納豆に入っています。

最近、大豆の人気が高まっています。大豆(乾燥豆)のベスト料理5は?
1位 五穀米ご飯(34%) 2位 味噌汁(14%) 3位 ひじきの煮物(10%) 4位 煮豆(9%) 5位 豆の煮びたし(3%)
同じ大豆でも水煮パックになると料理の様相が大分変わります。大豆水煮パックのベスト料理5は?
1位 ひじきの煮物(43%) 2位 煮豆(12%) 3位 ミックス野菜サラダ(7%) 4位 カレーライス(5%) 5位 ビーンズサラダ(4%)
乾燥大豆を使う時と、水煮パックの大豆を使う時の、消費者心理の違いがよく出ています。水煮パックの大豆は、あらかじめ水煮という調理がされており、ひと手間省けます。ひと手間省けた分だけ、色々な料理に使い回しが良くなります。サラダのトッピングや、カレーライスによく使われる理由がここにあります。水煮パックの大豆はここ3年間で2割アップしています。モノは使い様です
乾燥大豆の料理の種類は57種類、水煮大豆は47種類です。使いまわしの良い水煮大豆の調理の幅がもっと広がってよさそうです。両方の大豆をうまく使い回すと、家庭の豆料理の幅はもっと広がります。

話は180度変わります。
牛乳の食卓登場回数が減っています。牛乳の食卓登場回数を増やす秘訣は、調味料として使ってもらうことだと考えています。
牛乳が使われる料理の種類は308種類あります。この数字はケチャップの305種類に匹敵します。因みにマヨネーズ375種類、中農ソースは211種類です。牛乳は飲み物ですが、調味料として使われる機会が非常に多いのです。
このコーナーでM値の法則というお話をしたことがあります。M値(メニューの種類数)が高い食材ほど食卓登場機会が多くなるという法則です。この法則はほとんどの食材に働きます。

M値の法則が例外的に働かないのが牛乳です。
「牛乳のメニュー提案など昔からやっている」とおっしゃる業界の方もいるでしょう。でも案外にやり方を考え違いしている様です。馴染みの無いアイディア料理を提案しても広がりません。あくまで消費者の目線にあった普段使いの料理の提案が重要なのです。いまラー油をご飯にかけることがブームです。卵焼きをマヨネーズや片栗粉でふんわり焼くのがブームです。カジキマグロをカレー粉で炒めるのがブームです。塩昆布を調味料代わりにした野菜炒めがブームです。全て馴染み料理をちょっとした工夫でサプライズさせる料理が食卓人気を博しているのです。
牛乳を普段使いの料理の調味料として使うとこんなに美味しくなる提案こそが消費者の目線を奪うのです。飲料以外で、牛乳が使われる料理トップ5は次の通りです。
1位 コーンフレーク・シリアル(3%) 2位 ホットケーキ(1%) 3位 フレンチトースト(1%) 4位 プレーンヨーグルト(1%) 5位 玉子焼き(1%)
カレーライスやオムレツを想像した方は、当てが外れましたね。確かにカレーライスの牛乳使用率は高いです。しかしカレーライスと玉子焼きでは食卓に登場する頻度が違います。1年間の登場回数は玉子焼き30回、カレーライス20回です。
サプライズ料理提案で「1日 10cc料理運動」を行ってみてください。

消費者が牛乳を、調味料として料理に使い出すと、牛乳の消費量は飛躍的に伸びます。毎日食べる料理に、国民1人当り10ccを使えば、1年間の消費量は 4億5900万リットル以上になります。この量は年間生乳生産量の5%以上に相当します。牛乳を調味料として捉え、地道な運動を展開すると、意外な結果が生まれるでしょう。
因みに最近、日本酒業界でお酒を一滴たらす料理専用の新製品を出したようです。しかしこれはあまり勧められません。料理専用の日本酒をもう1品買わそうという魂胆が見え見えです。一滴のための日本酒をもう1本冷蔵庫におくことは生活者の目線にあっていません。そうではなく自宅にあるお酒を上手に使い回す提案が生活者の目線なのです。ゆめゆめ調理用の牛乳などを作ってはなりません。あくまで今の牛乳の使い回しをよくすることです。牛乳と良い係り合いができ台所に光があたることは素晴らしいことです。

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