目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第46回 潜在的強制力

私たち生活の多くの分野に流行やファッションが蔓延しています。世界同時進行する傾向も強めています。しかし食生活という分野には、流行やファッションとは別次元の文化という生活力学が働いています。鳴り物入りで日本上陸した世界のウオールマートが日本の食品市場を攻めあぐねている大きな原因が、日本の食文化の存在です。
文化は流行・ファッションとは異なり、変わりにくい性格を持っています。何故、文化は変わりにくいのでしょうか?
消費者自身も意識しない、潜在的強制力が働いているからです。

~潜在的強制力とは何?~

日本人は見知らぬ人に挨拶をする際、おじぎをします。欧米人は握手をします。おじぎは日本人の文化です。ここがポイントです。初めて挨拶する際、私たち日本人は意識をしておじぎをしているわけではありません。瞬間的におじぎをしています。この瞬間に働く力を「潜在的強制力」と呼んでいます。この無意識の力が文化の力です。最近、テレビや新聞で3人並んでお詫びのおじぎをしている光景をよく見かけます。あの際のおじぎには何十秒間、何度の角度でおじぎをするかのマニュアル本があるそうです。文化とは無縁のおじぎだからです。

「心脳マーケティング」(ダイヤモンド社)の著者ジェラルド・ザルトマン博士に云わせると、人間の行動の95%が無意識下の行動らしい。95%かどうかは知りませんが、消費者行動の大半は無意識下の行動ということは間違いありません。皆さん、普段の生活を思い起こしてください。案外に無意識のうちに行動していることのが多いでしょう。普段の生活では、文化という潜在的強制力が働いている場合が多いです。
家庭の食卓はバラバラに営まれておりランダム運動をしています。しかし夏になると多くの家庭で冷奴がよく登場し、秋になると秋刀魚が大人気になり、冬になると鍋が食卓の王座をしめます。何で「夏に冷奴を食べるの?」と、聞かれても答えようがありません。「だって、昔から食べているでしょう」が精々です。無理に聞かれると消費者は自己正当化して答えます。そんなの回答を鵜呑みにすることは極めて危険です。
先ほどのザルトマン博士は潜在化した消費者に対して、通常の消費者アンケート調査や消費者インタヴュー調査を実施しても無駄だといっています。かわって潜在意識を調べるための「アナロジーを使った深層心理面接法」を提唱しています。ただ私が思うにザルトマン博士が提唱する方法は、100年前の病理心理学者たちが提唱した「夢判断」の焼き直しです。病理心理学者の実験台にされるのはちょっと抵抗があります。潜在化した市場における消費者行動を探るためのうってつけの方法があるのです。その方法は80年前のこの日本で開発されました。
「え!本当!?」
「そうです。それでは次回をお楽しみに...」

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