目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第45回 文化はコトである

日本人は雨が降ると雨傘をさします。
日本人は、雨が降ると「雨傘をさす」というコトを起こします。そしてコトが起きた後に「どの傘にしようか」というモノの選択をします。ということは...「傘というモノ」の選択の前に、「雨が降ると雨傘をさす」というコトが必ず起きるわけです。ところで...
雨が降ると「雨傘をさす」というコトは、日本人特有の行為です。
アメリカ人は雨が降ると「レインコートを着る」というコトが一般的らしい。
ロンドンに長く滞在していた知人から面白い話しを聞きました。
ロンドンの紳士は雨が降ると「雨傘をたたむ」らしいのです。
ロンドンの紳士は傘をステッキ代わりに使っています。傘が雨に濡れるのを嫌がります。雨が降ると傘をたたむのがロンドン紳士のマナー(=コト)なのです。その知人の話しによりますと、ロンドンには広げた傘を綺麗にたたむ専門職人(巻き屋)が、いまでも商売をしているとのことです。と、すると...。
雨が降ると「雨傘をさす」というコトは日本人独特の文化なのです。因みにコトは文化だけとは限りません、時代トレンドや流行もコトです。言葉にならない、その日の気分や生活事情もコトです。主婦達は「今日は亭主が居ない」というコトを考えてから、夕食の献立を決め、食事の買物を決めます。
商品開発やマーケティングで一番に重要なことは、新しいコト(=文化やトレンド)を開発することですよ!
それをカタチにすることですよ!
何故なら、雨が降ると傘をさすという文化(コト)があるからこそ、雨傘マーケットが成立するのです。アメリカではレインコート市場が成立するのです。モノとコトで新しい市場(文化)を創造するのです。私はこれを~物事マーケティング~と呼んでいます。

図は市場=「消費者と商品の出会いの場」を、ピラミッドの図形で表しています。ピラミッドの底辺に消費者がいます。2層目に市場があります。市場の上に商品が載っています。図では、2層目を「市場」と呼んでいます。消費者と商品の出会いの場(接点)が市場であることを表現しています。
「市場=消費者と商品の出会いの場」

図形から市場のもう1つの意味が読み取れます。
消費者は「ヒト」です
商品は「モノ」です
では市場は「何?」

図形は「ヒトがモノを選択する前に必ず市場が存在する」を表しています。
「ヒトがモノを選択する前に必ず存在する市場とは何?」
「コトではないか?」
「コトは文化ではないか?」
「市場は文化ではないか?」

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かつてあるチョコレートメーカーが、日本のチョコレート市場を創造するために「バレンタインデーにはチョコレートを贈ろう」の一大ものごとマーケティングを展開しました。「バレンタインデーにチョコレートを贈ろう」は、新しいコトになり、日本人の文化となりました。クリスマスにクリスマスケーキを食べるという文化(=市場)は、戦後日本の家庭団欒の象徴となりました。もし、バレンタインやクリスマスという文化がなければ、大半のチョコレート市場やケーキ市場が消滅するでしょう。
缶コーヒーの4割が朝に飲まれていることを知った(株)アサヒ飲料は「朝に缶コーヒーを飲む」というをコト(文化)を育てるために、「モーニングショット」という商品で市場をデザインしました。ハウス食品のヒット商品「冷しゃぶドレッシング」も、それまでの冬にしゃぶしゃぶを食べるという文化に加え「夏の涼味として冷たいしゃぶしゃぶを食べる」という新しいコト市場を創造しました。
「土用の丑の日に鰻を食べよう」をPRしたのは平賀源内です。今や土用の丑は国民的大行事になっています。平賀源内は日本最初の物事マーケターだったのです。魅力的なものごとづくりを通じて市場を創造することが、マーケティングの一番に重要な仕事です。最後に一言。

「文化は守るために存在するのではない。文化は創造するために存在する」

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