目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第38回 商品はメディアである

あるトイレタリー・メーカーのマーケティング担当幹部と、情報ネットワーク社会における商品開発のあり方について雑談していた時、筆者は担当幹部がビックリするようなことを言いました。
「貴社は、完璧な商品を作ることに熱心になりすぎています」
「え!何故ですか?完璧な商品開発に熱心になるのは当たり前でしょう!」
「何故、完璧な商品を市場に出すことに熱心になるのですか?」
「そうしなければ売れないでしょう!売れなければ、売場から撤去されてしまいます」
「そこなのですよ、問題は!」
「...と、いうと?」
「今のメーカーは『消費者と信頼関係がない』を前提にしています。だから最初から完璧な商品を出そうとするのです」
「え!?」

「消費者との信頼関係が十分であれば、最初から完璧な商品を開発する必要などありません。大体にして、最初から完璧な商品を開発することは困難です。消費者だって使って見なければ判りません。そんな困難を考えると、ついつい商品開発が臆病になります。出来の良すぎる子供は、親からするとあまり可愛くないものです。親のつけ入るスキがありません。少々出来の悪い子は案外に可愛いものです。出来が悪くても親子の愛情関係を通じて、色々と言い合ったり喧嘩するから可愛いのです。商品も子供と同じです。あまりに完璧な商品は消費者のつけ入るスキを与えず、案外に可愛くないものです。貴社と消費者の間にお互いの信頼関係があれば、少々出来の悪い商品でも消費者が一生懸命に育ててくれます。商品は出来の悪い子供ぐらいに思った方が良いのです。完璧な商品を作る前に、消費者との信頼関係をつくることの方が大切です」

「商品はメッセージである」とよく言われます。しかし商品がメッセージ力を発揮するためには2つの条件が満たされなくてはなりません。
■メッセージを発する側が、何を伝えたいか明確である
■メッセージの受け手側が、受けた内容を理解することができる
このどちらか一方でも欠けるとメッセージは力を失います。いまそうした状況が多発しています。

■提供したい価値がわからない
最近、何を価値として提供したいのかよく分からない商品が目立ちます。提供する側に自信がありません。これではメッセージは伝わりません。

■メッセージを受ける消費者が価値を理解できない
何が価値であるか理解できない消費者が多くなっています。このような消費者を相手にいかに素晴らしいメッセージを送っても、砂に水を打つほどにむなしい結果になります。

商品はメディア力を高めなければなりません。メディアは喩えていえば親子の愛情関係の場です。これからの商品はそんな「メディア場」になる必要があります。
「そんなことができるの?」と思う読者も多いでしょう。1つのアイディアがあります。
次回をお楽しみに!

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