目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第37回 CVSの売れ筋商品の秘密~敵は本能寺にあり パート2

前回で次のような偉そうなことを言いました。
「POSデータのみに頼るコンビ二店の売場作りやPB開発の現場は、まるで暗闇に石つぶてを投げる様です。当たるわけがありません」

今回はえらそうなことを言った状況証拠をお見せしましょう。このコラムで何度かご紹介したシングルス食MAPから、コンビ二店の商品が売れる「何故?」が透けて見えるのです。
シングルス食MAPから、シングルスが自宅で消費する食品の内、コンビ二店で購入した割合がわかります。この結果からコンビ二店の利用割合の高い食材をリストアップします。ここで質問です。シングルスが自宅で消費するために購入した全食品(生鮮食品、加工食品、調味料、惣菜、菓子、飲料、アルコール:小分類2000食材)の内、コンビ二店で購入した食材の割合は何割だと思いますか?

答え
7.1%(2008年11月1ヶ月間)
(食品スーパー67.4%、一般小売店10.5%、生協2.0% 百貨店1.0%)

生鮮野菜をコンビ二店で購入した割合はわずか1.2%です。ところがカット野菜の購入割合は11.3%です。
「何故そんなに違うの?」
カット野菜の一番の利用は野菜サラダです。カット野菜の37%が野菜サラダに使われています。因みにシングルスがカット野菜を使う2番目の料理が判りますか?

答え
野菜炒め12.8%

柑橘系果汁のコンビ二店利用は11.8%です。シングルスが柑橘系果汁を買う背景に、野菜サラダとヨーグルトの存在があります。シングルスの食卓に野菜サラダが登場する頻度は通常の家庭とほぼ同じです。ヨーグルトの食卓登場頻度は通常の家庭の半分程度です。シングルスが柑橘系果汁を使った料理のうち、野菜サラダとヨーグルトの割合は何割だと思いますか?

答え
野菜サラダ(単品野菜含む)32.4%
ヨーグルト(牛乳でつくるヨーグルトドリンク含む)20.7%

魚介類をコンビ二店で購入する割合はわずか0.3%です。しかし冷凍魚介(シーフードミックス、えび、いか、ししゃも等)は3.2%です。冷凍魚介類が使われるメニューのベスト3は何だと思われますか?

答え
1位 和風の魚の焼き物(12.0%)
2位 鍋(10.7%)
3位 スパゲッティ(8.6%)

スパゲッティが3位になっています。因みにスパゲッティの食卓登場頻度が、通常の家庭の登場頻度をはるかに上回っていることは「29 シングルス市場の真実 ~新しい市場を創造する鍵はシングルスにあり」で既にお話しました。
実はスパゲティによく使われる食材は、コンビ二店で購入する割合が高くなるという面白い傾向があります。乾燥スパゲッティ4.4%、パスタソース 8.9%、スパゲッティソースの素9.3%、エスニック調味料11.1%、コンソメ・ブイヨン14.5%などがそうです。コンソメ・ブイヨンの14.5% がコンビ二店で買われている結果には驚きました。コンソメ・ブイヨンはスパゲッティだけでなく、コンソメ・ポタージュスープと中華風スープにもよく使われており、その結果の現れといって良いでしょう。
スパゲッティに良く使われるソーセージ8.2%、ベーコン7.8%も、コンビ二店購入割合が高くなっています。同じ畜肉製品でもスパゲッティにあまり使われないハムのコンビ二店利用は2.5%と高くありません。
このようにコンビ二店の売れ筋商品が使われるメニューを調べると、商品が売れる食卓背景がよくわかります。購入者の買い物籠からメニューを推定するバスケット分析調査がありますが、食MAPを使うとそんな面倒な調査は不要です。
図はコンビ二店利用の多い商品とその商品が使われるメニューの関係を一覧したものです。

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上図をじっと眺めていると、シングルスがコンビ二店を利用している食卓情景が浮かび上がってきます。
シングルスがよく食べる餃子に使われる餃子の皮5.6%、点心・飲茶の半製品11.0%となっています。ここで質問です。シングルスが夕食に焼き餃子を食卓に出す場合、どんな作り方をしていますか?

答え
皮から手づくり・皮を買ってきて手づくり 4.4%
半製品を買ってきて手づくり 21.0%
冷凍食品を使って手づくり 44.1%
惣菜の餃子を使う 30.5%
注)200811月~2009年3月

半製品の餃子を含めて、シングルスの手づくりは案外に活発です。
既に述べたことですが、コンソメ・ブイヨンはスパゲッティだけでなく、コンソメスープや中華風スープなどによく使われる調味料です。コンソメ・ブイヨンはコンビ二店の重要なカテゴリーということになります。
野菜炒めやチャーハン、スパゲッティ、ソーセージ料理に使われるベーコンやソーセージは、使いまわしの良い食材として、コンビ二店にとって重要カテゴリーです。
コンビ二店はヨーグルトとコーヒーによく使われる甘味料に力を入れなければなりません。
冷凍の果物は、ヨーグルトの付加価値を上げる重要カテゴリーです。

売れた情報は目先の結果情報です。売れた背景は将来を見据える原因情報です。目先の戦術に捉われない戦略を考えなければなりません。まさに「敵は本能寺にあり」の諺の通りです。
上記の図はシングルス全体から出された結果です。シングルスは男性と女性では食卓が大きく異なります。年齢によっても食卓背景が異なります。ターゲットにあわせた図を作る必要があります。

次の表はシングルスが、食品を自宅で消費するためにどこで買い物をしたかの結果です。コンビ二店は30代、40代の男性の購入点数が50%を越えています。スーパーに比べて女性の割合がかなり少なくなっています。もし、シングルス女性にターゲットを合わせた売場づくりや商品開発(PB開発)を行うのなら、先ほどの図を女性に合わせた図に作り直さなければなりません。

表にはセブンイレブン40代、50代の男性が中心です。どちらも女性の利用が少ないです。それに比べファミリーマートは30代のシングルス女性の購入割合が高くなっています。こうした、自店の主要顧客層の食卓という背景をしっかり把握した上で、売場作りやPB開発を行う必要があります。

「コンビ二店は商圏特性に合わせたターゲット・マーケティングが必要です」

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話は変わりますが、前掲の図のメニューから「売場に置いていない商品の中に、もっと売れる商品がある」が判ることにお気づきですか?スパゲッティやチャーハン、野菜炒め、ソーセージ料理、洋風スープ、中華風スープ、野菜サラダによく使われる食材で、コンビ二店がもっと力をいれる必要がある商品カテゴリーが判ります。食卓データと売場データを重ね合わせて、自分の足元を科学するわけです。
例えば、オリーブオイルがその一つです。オリーブオイルはシングルスのスパゲッティ料理にはなくてはならない調味料になっています。そのオリーブオイルのコンビ二店での購入割合は2.9%です。これをもしラーメンや餃子に使われる香味オイル並みの23.0%にすれば、売上は10倍になります。
ここで質問です。夕食のスパゲッティ料理をシングルスが作るために食用油を使う際、オリーブオイルを使う割合は何割だと思いますか?

答え
72.9%

シングルスの自宅内食率がもっとも高い料理に納豆料理があります。この納豆、シングルスのスパゲッティ料理にも良く使われている食品です。その納豆のコンビ二店購入割合はわずか1.2%です。納豆はコンビ二店がもっと力を入れるべきカテゴリーです。料理用途に配慮した納豆のPB開発は大きなポテンシャルを持っています。
無洗米はコンビ二店のPB開発の可能性の高いカテゴリーということが分かります。先の図をから分かるように、シングルスのコンビ二店利用が高いメニューは主食が中心です。とりわけチャーハンやピラフなど米の炒め料理が多いです。ならば、そのまま炒められる無洗米の商品開発は、シングルスのコンビ二店利用の重要な動機付けなります。
うどん料理で、シングルスは冷凍うどん並みに乾麺を良く使っています。しかし、コンビ二店の購入割合はほとんど0%です。乾うどんはもっと力を入れるべきカテゴリーだと思います。
生鮮食品の中にも強化すべきカテゴリーがたくさんあります。ただ問題は、それをスーパーと同じように並べてはダメです。シングルスだから「1人前容量にする」程度の工夫ではだめです。一人前容量が鍵なのではなく「一人前料理が手軽にできる」が鍵です。消費者の目線に合わせた商品開発や売場作りが重要です。その一つが消費者の言葉で「しゃべる食品」です。売場のパートさんが、自分たちが気に入った食品に「私、美味しいの!」シールを貼って、売上を3倍に増やしたココアの例もあります。
それにつけても、食卓の背景がわからずただ闇雲に商品開発を行い、その結果を単品管理しているコンビ二店のなんと多いことか!

追伸
今回お見せした図はコンビ二店全体についての結果です。今回の図を大手コンビ二3社についても描くことができます。描いてみました。驚くべき結果が出ました。その結果についてはお話できませんが、大手コンビ二・チェーン3社の大きな問題点が浮かび上がってきました。

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