目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第15回 消費者の大半が売場で献立を考えるって、本当?

小売のプロの間では「食事の買い物の8割は売場で決まる」が常識です。
プロ達が言うことだから誰も疑問を挟みません。しかし本当にそうなんでしょうか? 食品業界の名探偵は一見当たり前のことは必ず疑ってかかります。

少々古い話(3年前)ですが、食MAPによると関東360世帯が食事の買い物をした際(2004年1年間:94,139回)、売場で夕食の献立を考えた割合は7パーセントにすぎませんでした。プロの常識と、食卓の実態に大きな違いがあります。何故でしょう?
実は、売場で献立を決めたり、買う食品を決めるには様々な場合があるのです。「売場で決めた」の一言では片付けられない複雑な事情があります。今回はその事情に迫ります。食MAPから意外なことがわかりました。

プロの間で、売場で献立が決められる代表的メニューと言われている鍋物や寿司類などに使う食材は、実際は予めメニューを決めてから売場にでかけて買われるという逆の結果が出たのです。ここで問題です。

問 売場で献立を決めることの多い食材は何でしょうか?

答 野菜のお浸し、焼き魚、煮魚などの和風料理に使われる食材

売場で献立を考えることが多いと思われている土曜日や日曜日・祭日は、実際には献立を決めて買い物をしている消費者が多いという、これまたプロの常識と逆の結果がでました。一方、平日は献立を決めずに買い物をするケースが多いという結果もでました。プロの常識は当てになりません。ここで問題です。

問 献立を決めず買い物に出かけ、売り場で迷っている場面が一番多い曜日は何曜日ですか?

答 月曜日

プロからすると「まさか!」の結果です。何を売ったら良いのか、プロが一番悩む曜日が月曜日だからです。プロが悩んでいる同じ日に、消費者も「何を買ったら良いのか」悩んでいます。両者が悩んでいる売場は儲かりません。

どうやら売場で献立を考えたり、買うものを決めるという事実の裏には、これまで明らかにされなかった2つの場合が隠れているようです。
1つ目は「あらかじめ献立を考えているが、どの食材にするかを売場で決める」場合です。休日など家族揃った楽しい夕食献立を売場で決める場合などがそれです。この場合、メニュー自体は既に決まっています。「今晩は子供達の好きな鉄板焼きにしよう」「主人の好きなすき焼きにしよう」といった具合に決まっています。考えてみれば当たり前のことです。週に1度の楽しい休日の食卓を、メニューを決めずに売場に行くと、それこそ何を買って良いのかわからず、売場でパニックを起こしてしまいます。売場でパニックを起さないためには、買い物に出かける前にあらかじめメニューを決めておく必要があります。だから主婦は休日に決まって、主人や子供たちに「今日、何が食べたい?」と聞くのです。そして売場で、決めたメニューに良い材料は何かと物色するのです。その際、お買い得の食材や、質の良い旬の食材があればつい手が出るのです。売場に行く前にメニューを決めて手から、で買う食材を売場で決める。「売場で決める」とはそんな意味です。

もう1つの意味はメニューも買う食材も決まらないまま、本当に売場で迷っている場合です。そんな日が休日の翌日の月曜日や火曜日に訪れるのです。「日曜日は子供たちの好きな肉料理だったので、魚や野菜を使った料理にしたいがなかなか献立が浮かばない」といった具合に悩みます。家族に「今日何にする?」なんて聞けません。「下手に聞くと、今日もお肉にして!」が返ってきます。週明けの売場の主婦達は、独り悩んでいるのです。

ある売場のプロに食MAPの焼き魚データを見せた際、彼は「いままでの我々の販売促進は一体なんだったのだ!?」と思わず叫びました。彼が見た焼き魚のデータは曜日別の夕食に登場する焼き魚の出現度でした。結果によると焼き魚が一番よくでる曜日は月曜日と火曜日でした。逆に一番出ない曜日は日曜日、土曜日でした。その食品スーパーでは土曜日、日曜日に焼き魚の販促に力を入れ、チラシにも載せていました。ところが月曜日や火曜日にはなんの販促も行っていませんでした。消費者が売り場で一番困ってる日が月曜日と火曜日だということを知らなかったのです。まさに売場の常識は食卓の非常識です。

因みに卵が一番使われる曜日は何曜日かご存知ですか。日曜日、土曜日なのです。卵の販促は週末から休日が一番ということです。豆腐は何曜日に良く使われていると思われますか? 圧倒的に月曜日です。
ここで問題です。

問 日曜日の卵料理と月曜日の豆腐料理は何が一番喜ばれますか?

答 ご自分で考えてください。

追伸
「売場で献立を考える」の3つ目の場合があります。それは土用の丑の日や七草かゆなど、季節行事やイベント時の食卓の買い物をする場合です。売場で献立を考えたときに食卓によく登場するメニューのナンバー1は鰻の蒲焼・うな丼です。パエリアやチーズ・フォンデューもよく登場します。こうしたイベントメニューは売場でのシズル感演出が大事です。例えばピザなどはクリスマスなどのイベント日に、焼きたてピザで演出すべきです。間違っても冷凍ピザで演出してはなりません。

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