目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第14回 曜日の法則

今回も前回と同様「健康と食」(社団法人 日本衛生協会)に私が連載している「クイズ日本の食卓の新常識 2月号」から拝借しました。

ある惣菜コンサルタントが筆者にそっと打ち明けてくれました。「トンカツは木曜日に売るのがコツですよ!」
私はさっそく食MAPで夕食にトンカツが一番よく出る曜日を探りました。結果は木曜日ではありませんでした。日曜日でした。日曜日のトンカツは普段の2割アップします。木曜日のトンカツは普段の1割ダウンでした。売場のプロは自分の売場事情に長けています。しかし食卓事情には全くの素人です。消費者は食卓のプロです。この点が問題なのです。素人がプロを相手に商売しても、儲かるわけがありません。さて問題です。

問 オムライスは何曜日によく出ますか?

答 金曜日
普段の3割アップです。金曜日によく出るメニューにハヤシライスがあります。

続いて問題です
問 オムライスやハヤシライスが金曜日によく登場する理由は何でしょう?

答 お父さんが夕食を一緒にしないからです

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食MAPでは食卓事情を毎日聞いています。2007年の1年間で、お父さんが家族と一緒に夕食をとらなかった割合は平均3割です。これが金曜日に限ってみれば4割と1割もアップします。そうした食卓では子供の好きなメニューが多くなります。実際、金曜日に「子供の好きなメニューにした」と答える割合が多くなっています。オムライスやハヤシライスは子供が好きなメニューなのです。金曜日についでお父さんが夕食を一緒にしない機会が多い木曜日にはハンバーグや鶏の唐揚がよく登場します。
因みに家族の中で一番好みが優先されているのがお父さんです。ついで子供、お母さんの順番になります。ここで問題です。

問 この9年間でどの家族の好みが優先される傾向が強まっていると思いますか?

答 お母さんです
時代の流れを感じさせられる結果です。

問 夕食に焼き魚がよくでるのは何曜日でしょう

答 月曜日で、普段の15%アップ

野菜の煮物も月曜日に良く登場します。焼き魚や野菜の煮物が月曜日に良く登場する謎を即座に解ける読者は食の達人の資格十分です。謎解きの鍵は日曜日のメニューにあります。日曜日の夕食には寿司や鍋や焼肉などのご馳走メニューが登場します。こうしたメニューの多くは栄養バランスより美味しさや、家族の好みが優先されます。主婦は1週間をサイクルに栄養バランスを考えているようです。1週間の栄養バランスをリセットする日が月曜日や火曜日なのです。そうした際に主婦の頭に浮かぶのが野菜料理や刺身以外の魚料理なのです。ここら辺り国が推奨している食事バランスガイドとは一味違っています。

週の初め、野菜料理や魚料理に力を入れている売場がどれほどあるでしょうか。以前、ある大手スーパーの鮮魚バイヤーに月曜日に焼き魚がよく登場している事実を見せたところ、ビックリした様子でした。その売場では週末や日曜日に刺身や焼き魚に力を入れた売場づくりをしていました。ところが週の初めには何の策も講じていなかったのです。売場のプロは食卓の素人なのです。食卓の素人が食卓のプロ相手に商売しても、売れるわけがありません。次ぎの問題が解ければ貴方は食卓のプロです。

問 夕食にお茶漬けがよく出るのは何曜日?

答 日曜日

謎を解く鍵は日曜日の生活行動にあると睨んでいます。日曜日は家族揃っての外出が多くなります。外出から帰った夕食は簡単に済ましたいという生活者心理が働きます。お茶漬けはそんな時にうってつけのメニューなのでしょう。市販の弁当が食卓によく登場するのが土日の夕食なのも外出が影響しています。私はこうしたメニューを「主婦の安息日メニュー」と呼んでいます。土日メニューはご馳走メニューと主婦の安息日メニューに2極化しています。

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何年か前にハウス食品が火曜日はシチューズディと銘打ったCMを流し話題をふりまきました。筆者の推測では、このCM作成には曜日の法則をたくみに使ったハウスの戦略があると睨みました。そこで問題です。

問 「火曜日はシチューズディ」CM戦略は何?

答 カレ-とシチューの「競合法則」を見抜いた(これは私の推測です)

カレーとシチューは食卓で競合しています。当時、カレーは土曜日と日曜日に山をつくっていました。最近では主人が帰らない金曜日に多く登場していますが...。月曜日の夕食に日曜日のカレーが残りメニューとして再登場する確率が高いのです(夕食に残り物のカレーが食卓に出る確率は25%以上)。火曜日になるとカレーライスの登場がぐっと下がります。その火曜日にシチューが登場するのです。この競合法則を巧みに使ったCMが「火曜日はシチューズディ」なのです。
ハウス食品のCMを観た消費者は潜在化していたシチューのニーズが「そうだ、今日はシチューにしようと」いったように顕在化するのです。食卓の法則を知り、消費者に「気づかせる」ことが大事です。

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