目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第4回 食卓宇宙を観察する天体望遠鏡

top_column_4.jpg隣の家の食卓事情なんて全く分かりません。それぞれの家庭の食卓はそれぞれの事情で営まれています。食卓事情は家庭によりバラバラです。ランダム運動をしているようにすら思えます。これほど科学が発達した現代で、食卓はまるで失われた暗黒大陸です。
食MAPから関東360世帯の食卓を観察した結果、それぞれの家庭のこまごまとした食卓事情を越えた不思議な力が働いている事がわかりました。私たちがこれまで全く知らなかった「日本の食卓力学」の存在を発見しました。発見された「日本の食卓力学」は、自然の摂理に似た文化の摂理です。食卓に文化の摂理(法則性)が存在するならば、その法則を知ると知らないでは、食卓を豊かにする技は大違いです。食の達人はこの法則を知り操る、食卓の魔術士です。もちろん使う魔術は食卓に幸せを呼ぶ白魔術です。

食卓は宇宙にたとえられます。かつて古代人は肉眼で天空を見上げ、地域の風土や文化に根ざした星座伝説をつくりました。そこから独自の宇宙観や神話が生まれました。その後天体望遠鏡が発明され天文学が飛躍的に発展しました。天空の知識も飛躍的に高まりました。宇宙観は地域の風土や文化を離れ、地球次元の科学にまで発展しました。知識は、神話学から宇宙物理学へと変貌しました。食卓も同じです。私たちは「食MAP」という食卓宇宙を観察する天体望遠鏡を手に入れました。
星には運行周期があります。メニュー出現にも運行周期があります。刺身は7日のサイクルで夕食卓宇宙を運行しています。カレーは18日のサイクルで夕食卓宇宙を運行しています。この法則はこの食MAP観察以来の10年間変わりません。
食MAPモニター家庭では、毎日の食卓メニューを入力してもらう際に人気メニューを記録してもらっています。食MAPから食卓に出現する毎日の人気メニューがわかります。メニューは食卓という天空にまばたく星々に喩えられます。さすれば人気メニューは光り輝く星です。
星には光り方の法則があります。太陽のように自ら光る星と、月のように太陽の光を借りて光る星があります。メニューにも光り方の法則があります。自分の力で光るメニューがあります。光の素はメニューに使われる材料です。冷やし中華は自らの力で光ることができます。光の素は金糸卵でも細切りハムでもありません。季節の野菜です。トマトやきゅうりなど、季節の野菜を豊富に使った冷やし中華メニューは人気が高くなります。
他のメニューの力で光るメニューがあります。光の素は食卓に同時に出現するメニューです。湯豆腐は使われる材料の違いによって人気度は大きく変わりません。食卓に一緒に出るメニューで人気度が大きく変わります。混ぜご飯や炊き込み御飯と一緒に出ると湯豆腐の人気が高まります。

ここで質問です。
何故、混ぜご飯や炊き込み御飯が一緒に出ると湯豆腐の人気が高まるのでしょう?
答え:私の推理です。食卓で大きな顔をしているのが湯豆腐の鍋です。しかしメインディッシュとしていさかか迫力に欠けます。かといって1品メインディッシュを加えるのは面倒です。そこで、主食だけどおかずにもなる混ぜご飯や炊き込みご飯が出番となるのです。混ぜご飯や炊き込みご飯は使う食材で季節感が出せます。私は「おかずごはん」と命名しました。

太陽の様に多くの星々を引きつける星があります。多くのメニューを引きつけるメニューがあります。色々なメニューに引きつけられるメニューもあります。味噌汁はどんなメニューにも相性良く登場します。だから食卓出現率が高まるのです。食卓宇宙からメニューを排除するメニューがあります。ラーメンやパエリアは食卓宇宙から他のメニューを排除する力が強く働きます。
食卓宇宙からメニューを排除する一番強力なメニューが市販の弁当です。市販弁当が出た夕食卓には、飲み物やデザートを除いてほとんど何も登場しません。食MAPから関東の一般家庭の夕食卓を覗いてみると、100世帯に1世帯の割合で市販弁当が登場しています。この数字、ちょっとびっくりではないですか?夕食卓宇宙は、市販弁当という巨大星に吸い込まれブラックホール化しています。
食卓は私達にもっとも身近ですが、誰も知らない未知の宇宙です。実際に、365日の食卓宇宙を観察したことなど、有史以来1度もなかったことです。その未知の食卓宇宙を観察することができる天体望遠鏡が食MAPです。
食卓宇宙を観察し、そこに作用する「食卓の力学」を研究する新しい学問を「食卓造景学」とよんでいます。食卓宇宙に働く力学は、私達自身も気づいていない潜在ニーズの世界です。決してアンケート調査などで明らかにできる世界ではありません。もしこの食文化の法則が解明され生活に活用できれば、日本の食文化はもっと豊かになるでしょう。私の大きな夢です。

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