食彩事記

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第34回 柿

image_200811_1.jpg道路には落ち葉が増え、山間部では初雪の便りが聞かれるようになりました。今回は、店頭で見かけていた梨の数が減り、代わりに登場し始めた「柿」を取り上げます。

「柿」の産地

「柿」は東アジア原産で、古事記や日本書紀に記されていたことから、奈良時代に中国から伝わったとされています。秋の夕暮れに、庭にある赤く熟した実のついた柿の木や、軒先につるした干し柿といった田舎の風景が浮かびます。
主な産地は、九州から東北地方までです。「柿」には「甘柿」と「渋柿」があり、気候の温暖な中部以南では「甘柿」を、東北地方までは耐寒性がやや強い「渋柿」が栽培されているようです。和歌山県・奈良県・岐阜県で全体の4割ほどを占めます。

「柿」の品種

世界で1000種類ほどあり、日本では数十種類あるようです。主に、「甘柿」と「渋柿」に分類されます。これは、渋みの成分であるタンニンが、可溶性か不溶性かの違いです。可溶性のときは口の中で溶けるため渋みを感じ、不溶性のときは口の中で解けないため渋みを感じないようです。「甘柿」は成長過程で不溶性のタンニンになるため渋みを感じなくなります。一方、「渋柿」が甘くなるのは、アルコールや炭酸ガスで可溶性のタンニンを不溶性に処理するためです。なお、干し柿にすると、渋みはなくなります。「甘柿」は、富有・次郎・西村早生・筆柿・太秋・花御所など、「渋柿」は、平核無・刀根早生・西条・愛宕が代表的です。
9月下旬頃から西村早生・刀根早生・筆柿が出荷され始め、10月上旬には西条、10月中旬には平核無・太秋、10月下旬には富有・次郎、11月以降は愛宕・花御所と店頭で見かける種類が増えていきます。

編集後記

image_200811_2.jpg頂き物の筆柿があったので、ほかに、和・洋菓子で「柿」を使ったものがないかとデパートで探しました。運悪く、ハロウィンの時期だったので、かぼちゃを使用した和・洋菓子が多く、「柿」を使用したものはわずかでした。購入した和菓子は、柿羊羹とゼリーを混ぜたような食感でした。
「富有はあごで食べ、次郎は歯で食べ、たねなしは舌で食べる」ということばがあるそうです。「柿」の硬さや甘味の好みは人それぞれです。
私は、子どもの頃に「平核無柿」しか食べたことがなかったので、今でも、水分が多めで柔らかくなる前の「平核無柿」を好んで食べます。みなさんは、どのような「柿」がお好みでしょうか? 身近な話題にするのもよいですね。

今月のコラム執筆者:卒業モニタ 沖さん(練馬区在住)


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