食彩事記

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第32回 梨

image_200809_1.jpg朝夕少しずつ涼しくなり、日中のせみの声から夜の虫の声を聞く時間が長くなってきました。9月から11月にかけて、いろいろな種類の「梨」を店頭で見かけます。年中見かける果物の中で、「梨」は旬を感じる数少ない果物ではないでしょうか。今月は「梨」を取り上げます。

「梨」の歴史

「梨」は、弥生時代の遺跡から多数の種子が発見されたことからこの頃より野生の「梨」を食用としていたようです。日本で栽培されている果物の中でも歴史が古く、日本書紀に栽培を奨励する記述があるそうです。江戸時代には100を越す品種が栽培され、現在のような甘味の強い「梨」は明治以降に品種改良されたものです。日本の「梨」は、洋梨と違いシャリシャリした食感があることからSand pearと呼ばれたり、リンゴのような形からApple pearと呼ばれたり、多くの呼び名が海外ではあるようです。国内で消費されるほかに、香港・台湾・アメリカ・シンガポールなどに輸出されています。

「梨」の品種

日本の「梨」は果皮の色から黄褐色の赤梨系(幸水、豊水など)と淡黄緑色の青梨系(二十世紀)に分かれ、多くは赤梨系です。現在では、幸水・豊水・二十世紀・新高の4品種で収穫量の9割を占めています。このほかに、新興・南水・長十郎・あきづき・愛宕・新水・にっこりなどがあります。
8月中旬頃から「幸水」が出荷され始め、下旬には「豊水」、9月上旬には「新高」「二十世紀」と秋が深まるとともに店頭で見かける種類が増えていきます。日本の「梨」の出荷が終わる頃には洋梨のラ・フランスを見かけるようになってきます。

編集後記

image_200809_2.jpg茨城産の「幸水」を購入しました。お盆に帰省してスーパーなどにしばらく行かなかったので、店頭で「幸水」と「豊水」が並んでいるのを見たときは、「もう梨の時期?」と思いました。これから11月にかけて、「梨」の品種の移り変わりが店頭でもよくわかります。
私が子どもの頃は、「千両梨」がほとんどでした。形はひょうたん型をしていますが、シャリ感があり甘味も程よくありました。木箱におがくずや新聞紙に包んで保存し、年末年始まで食べることができました。この「千両梨」は北海道産で、道外の人はあまり知らないようです。実家で食べる機会があるとこの素朴な味に懐かしさを感じます。皆さんが子どもの頃は、どのような「梨」をよく口にされていたのでしょうか?ご家庭や職場で話題にすると出身地や年代により違うかもしれませんね。

今月のコラム執筆者:卒業モニタ 沖さん(練馬区在住)


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