食彩事記

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第28回 柏餅

image_200805_1.jpg新緑のまぶしい季節になりました。そろそろ花粉症の方も症状が治まり、野外に出て活動したくなるころですね。今月は、「こどもの日」から「柏餅」について取り上げます。第4話かしわ餅とあわせてご覧ください。

「こいのぼり」の歴史

「こいのぼり」は江戸時代初期からと言われています。戦乱が治まり、武士は戦いで禄高をあげることができなくなり、この頃から、端午の節句に家紋や鐘馗(しょうき。濃いひげ・黒衣・巨眼の姿で剣を身につけた中国の疫病を防ぐ鬼神。)を描いた幟を立て自家の発展を願うようになりました。これが庶民の間に広まったのですが、武家と同様の家紋の幟は憚られ、「こいのぼり」をあげることになったようです。「鯉の滝登り」」のことわざで、中国の黄河上流にある竜門という急流を泳ぎ登ることができた鯉は、竜になるという伝説があり、出世の象徴となっていたからです。また、五色の吹流しは五行説からきたもので、青(木・春)、赤(火・夏)、黄(土・土用)、白(金・秋)、黒(水・冬)を表し森羅万象を示して、邪気をはらう力を持つとされています。
今では大きな「こいのぼり」を都会で見ることは少なくなりましたが、以前、広島郊外で「こいのぼり」の竿と家紋・鐘馗を描いた幟の2本が立てられている光景を見ました。私にとっては幟を見るのは初めてだったので、今でも新緑を背景に悠々と泳ぐ鯉と幟を鮮明に覚えています。皆さんのところではどうでしょうか?

柏餅

以前に広島に住んでいたときに、「柏餅」を購入すると柏の葉ではなく丸い光沢のある葉に餅が包まれていました。もちを包んでいる柏は、関東から東北・北海道で多い植物で、関西以南では自生していなかったために、サルトリイバラの葉を使用していたようです。今では、流通も発達して柏の葉の柏餅もありますが、そのときには柏の葉でなくとも「柏餅」と呼んでいることをはじめて知りました。ほかに、「しば餅」とも呼ぶようです。また、私が育った北海道の一部の地域では、柏餅よりも「べこもち」が主流でした。北海道を離れるまでは、この「べこもち」が道南地方のみのお菓子とは知りませんでした。葉っぱの形をした白と黒(黒砂糖を使用)の2色模様の「べこもち」は、この時期になるといつも思い出し食べたくなりますが、もう久しく口にしていません。皆さんも、帰省や旅行の際に、地元の和菓子屋さんをのぞいてみるのもよいですね。また、ご家庭や職場などで話題にしてみてはどうでしょうか?

編集後記

image_200805_2.jpg今回は、地元の和菓子屋さんで購入しました。もちを2つに折り間に餡が挟んでありました。白色の餅は漉し餡、桃色の餅は味噌餡、よもぎ餅は粒餡でした。何気なく食べている和菓子ですが、季節を感じさせられるばかりではなく、使っている材料にも意味があることがわかります。第4話の「柏餅の由来」を子供に教えながら食べるのもよいですね。


今月のコラム執筆者:卒業モニタ 沖さん(練馬区在住)


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