食彩事記

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第27回 いちご

image_200804_1.jpg桜前線の情報を聞きながら、入社・入学といったピカピカの1年生を街中でみかけ、春を実感する4月になりました。春の果物というと、皆さんは何を思い浮かべるのでしょうか?店頭の青果物では、「苺」が目に付くので、今月は「苺」を取り上げます。

「苺」の歴史

「苺」は世界各地に野生しており、石器時代のスイスの住居遺跡から野苺の種子が発見されたことから、この頃から野生の「苺」を食べていたようです。日本では平安時代に野苺を食べていたことが「枕草子」に記されているそうです。
栽培が始まったのは18世紀に入ってから、南アメリカ原産のものと北アメリカ原産のものがオランダで交配され、ヨーロッパ各地で盛んに栽培されるようになりました。日本には、江戸時代末期にオランダ船で長崎から入ってきたことから、「オランダいちご」と呼ばれました。しかし、観賞用だったために普及することはありませんでした。実際に栽培されるようになったのは、福羽逸人(促成栽培や温室栽培の先駆者であり、日本で始めてリンネがまとめた植物の分類法から、図に解説をつけた草木図説を刊行した人物)が、新宿御苑で品種改良した「福羽」が最初です。この「福羽」は、当初「御苑いちご」と呼ばれ門外不出でした。市場向けに栽培されるようになったのは戦後で、静岡を中心に栽培されるようになり、やがて、全国に広まり新しい品種も次々に生まれています。

「苺」の品種

昭和30年代はアメリカからの「ダナー」が東日本を中心に広まり、西日本の「宝交」とともに全国的に普及することになります。その後、「西のとよのか、東の女峰」に変わり、現在は「とちおとめ」「とよのか」「さちのか」「あきひめ」「さがほのか」「あまおう」など年々店頭でみる品種が多くなり、品種の世代交代の激しさもわかります。また、全国的に流通している品種ばかりではなく、地元のみで流通する品種も多くあります。皆さんは何種類ご存知でしょうか?

編集後記

image_200804_2.jpg「苺」の旬は5~6月の路地ものですが、今では、クリスマスケーキの材料としての需要が多い12月に生産量が多く、4月までは温室ものが中心になります。この頃にイチゴ狩りに行く方も多いと思いますが、是非、旬の露地ものを購入して、ジャム・ソースを作ったり、パン・ケーキに加えたり、焼酎につけて苺酒などで自然の恵みを味わってみてはどうでしょうか?
今回は、テレビで「あまおう」が海外で人気があると放送していたので、果物の小売店で「あまおう」を購入しました。農業試験場で6年もの年月をかけて品種改良され、「あかい」「まるい」「おおきい」「うまい」の頭文字からつけた「あまおう」は、その名のとおりでした。


今月のコラム執筆者:卒業モニタ 沖さん(練馬区在住)


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