食彩事記

食彩事記

第26回 春分の日

image_200803_1.jpg太陽の出ている時間が日々長くなり、暖かさも感じられる季節になりました。梅や桜、春一番といった春の便りが届く3月は、「春分の日」で話を進めます。関連のある第八話の「おはぎ」も合わせてご覧ください。

「春分の日」とは

祝日の「春分の日」は、「秋分の日」と同様に、前年の2月1日の官報に掲載される「暦要項(れきようこう)」で正式決定となります。今年の「春分の日」「秋分の日」は昨年決まったもので、それ以前は正式に決まっていないということになります。ただ、正式決定でなくても、先の「春分の日」「秋分の日」を必要とする人も多く、参考として次のようにしています。
「国民の祝日に関する法律」によれば、「春分の日」は「春分日」、「秋分の日」は「秋分日」を採用するとなっています。これは、天文学上の呼び名です。暦を計算する場合、天球(地球から見える全ての天体が地球を中心として運行する仮想の球面)を念頭に置き、お互いが傾いている横道(太陽が星々の間を移動すること)と天の赤道(地球の赤道を天球面まで延長したもの)が、交わった2点を「春分点」「秋分点」と呼びます。この上を太陽が通過する瞬間を「春分」「秋分」と定義し、それを含む日を「春分日」「秋分日」とします。正式発表より先の「春分の日」「秋分の日」は、この計算で予想はできますが、地球の運行状態は常に変化しているため、参考としてみるということになります。
「春分の日」「秋分の日」を中日として前後3日の計7日間が「彼岸」の期間です。

「牡丹餅」の別名

「お彼岸」のことは、第八話で書かれていますので、ここでは、季節ごとに名前の変わる「牡丹餅」について書きます。皆さんもご存知のように、春の「牡丹餅」は、牡丹の花をかたどって丸く大きく、秋の「おはぎ」は、秋の七草の萩の赤紫の花をかたどって小ぶりで長めにつくられています。「こしあん」が「牡丹餅」、「粒あん」が「おはぎ」というのは、材料の小豆の収穫時期に関係がありました。秋は小豆の収穫時期と重なり、とれたての小豆を使うため皮も柔らかいことから「粒あん」を使い、春は冬を越した小豆を使うため皮が硬く食感が悪いことから「こしあん」を使っていたようです。現在は、保存技術や品種改良により、1年中「こしあん」も「粒あん」も使われています。
では、夏はというと「夜船」、冬は「北窓」というそうです。お餅と違い、「ペッタン、ペッタン」と餅を杵でつかずにつくれるため、ご近所がいつついたのかわからない「つき知らず」から、夜は船がいつ着いたかわからない「着き知らず」となり、「夜船」となったそうです。「北窓」も同様に、「つき知らず」から北の窓は月が見えない「月知らず」となり、「北窓」となったとのことです。昔の人の自然や季節を結びつけた遊び心に感心します。

編集後記

image_200803_2.jpg今回は東京・日本橋の百貨店で購入してきました。あんが甘すぎず上品な味でした。ここでは、粒あんの「おはぎ」でしたが、小ぶりで丸いものでした。
皆さんも購入する際に、これは?と考えてみるのも楽しいのではないでしょうか?


今月のコラム執筆者:卒業モニタ 沖さん(練馬区在住)


graph_200803.jpg

食に関するコラム 食彩事記の一覧に戻る

ページトップへ戻る