食彩事記

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第10回 ボジョレー・ヌーヴォー

image_200611_1.jpg11月のイベントのひとつに、「ボジョレー・ヌーヴォー解禁」があります。
今年の解禁日は11月16日です。解禁日にはデパートではたくさんのボジョレー・ヌーヴォーが売り出され、それを目当てにたくさんのお客さんが集まります。ワイン好きでなくても、この日だけはついついワインを買ってしまうという方も多いのではないでしょうか?
今回は、この「ボジョレー・ヌーヴォー」について調べてみました。

ボジョレー・ヌーヴォー解禁日の起源

フランスのボジョレー地区の農民が収穫を祝ったのが始まりとされます。ヌーヴォーがよく売れるため各メーカーがどこよりもいち早くヌーヴォーを出荷しようと競い合っていたものがだんだんエスカレートしていき、ついにはワインとして十分出来上がっていないにもかかわらずワインとして出回るようになってしまったことから解禁日が設定されました。
この地区の最も収穫の早い村では11月の上旬にワインが出来上がり、また、聖マルタンという聖人の日(キリスト教の殉教者や貢献者の祝日:聖人暦)もあったことから、縁起をかついで11月11日を解禁日としました。
この11月11日が聖人暦の見直しにより無名戦士の日に変更され聖人の日ではなくなったことから、いちばん近い別の聖人の日、聖アルベールの日である15日に解禁日を移したのです。
しかし、毎年11月の「15日」と決めてしまうと、解禁日が土曜日や日曜日に重なってしまう為、新酒の出荷スケジュールや売れ行きに影響してしまいます。そこで、フランス政府が1984年に解決策として「毎年、11月の第3木曜日」という、毎年変動する解禁日に設定しました。
今日では、それぞれの国の現地時間で11月の第3木曜日の未明の午前0時に一般への販売が解禁されます。日本では、時差の関係から、世界の先進国の中で最も早く解禁の時を迎えます。

ボジョレー・ヌーヴォー

「ボジョレー」はフランスの地名、「ヌーヴォー」は新種の意味でフランスのブルゴーニュ地方南部に隣接する丘陵地帯、ボジョレーで生産される赤ワインの、収穫年の11月に出荷される新酒のことです。また、赤ワインは通常ピノ・ノワール種から作られていますが、ボジョレー地区ではガメイ種というブドウ品種からワインが作られます。
ガメイ種は、栽培がしやすく収穫量が多いために14世紀近くまでブルゴーニュのコートドール一帯で栽培されていましたが、この土地の特徴である石灰質の土壌で栽培されたガメイ種からは、酸味の強い、薄いワインしかできませんでした。このためブルゴーニュ公国を統治していたフィリップ公はこのガメイ種から作られるワインを嫌い、コートドールの畑で栽培することを禁止しました。引き抜かれたガメイ種は南のボジョレー地区に移植されることになりました。
この地区は、ブルゴーニュ地方で最も南に位置していることから、温暖な気候を好むガメイ種とは非常に相性がよく、糖分が豊富で酸味も生きたブドウが実り、今日のボジョレー地方の礎となりました。
ボジョレー・ヌーヴォーは数年かけて発酵させる通常のワインと違い収穫した年にワインとして出荷することから、醸造期間は数ヶ月しかありません。このためマセラシオン・カルボニック法と呼ばれる急速にブドウを発酵させる技術が用いられます。

編集後記

image_200611_2.jpgもうすぐボジョレー・ヌーヴォー解禁日!ワイン党の方はこの日を待ち侘びていることでしょう。多くの酒屋さん・コンビニやデパートのお酒売場では、既に予約が始まっていますね。残念ながら今の時点では今年のボジョレー・ヌーヴォーを手に入れることが出来ないので、2005年のボジョレーを購入してみました。
今回選んだのは、ブルゴーニュの造り手としてはTOP5に入る、32歳の若さで彗星のごとく現れた醸造家の作るボジョレーです。彼を「ボジョレーのトップワン」として挙げる人も大勢いるそうです。彼はもともとは菓子職人という、醸造家としては珍しい経歴の持ち主です。彼の作るワインは、葡萄は全て手摘み・SO2(酸化防止剤)無添加・ノンフィルターで瓶詰めしているそうです。2005年のボジョレーを飲んでみましたが、1年経った今でもフレッシュな酸味があり、また葡萄の濃厚な味が感じられました。1本3500円程度とそれ程高価ではないので、誰でも気軽に楽しめる美味しいワインです。
今年の彼のボジョレーもとても楽しみです。

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