食卓双眼鏡

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第12回 13節気(11月下旬~12月23日頃)材料編:茹でうどん・冷凍うどん

12節気で鍋焼きうどんと煮込みうどんの違いについて観察しました。
今回は茹でうどんと冷凍うどんの違いについて観察してみましょう。そこで問題です。茹でうどんと冷凍うどんのどちらが食卓によく登場しますか?

答え 茹でうどん(2007年7月~2008年6月1年間のTI値11.6)
冷凍うどん(同6.6)

冷凍うどんの2倍近く、茹でうどんが食卓に登場しています。次の質問です。朝・昼・夕のどの食卓に一番よく登場するでしょうか?

答え 茹でうどん  昼食52.0%  夕食40.8%
冷凍うどん  昼食51.1%  夕食39.1%

「うどんは昼食料理」が一般的のようです。ただ夕食も4割と多いです。
では、昼に食べるうどん料理はなにでしょう?

答え 茹でうどん  1位 温かい汁うどん  2位 焼きうどん  3位 鍋焼きうどん
冷凍うどん  1位 温かい汁うどん  2位 煮込みうどん  3位 カレー南蛮

昼に一番食べるうどん料理が「汁うどん」というのはなんとなく納得できますね。ところが2番目、3番目に食べるうどん料理というと、茹でうどんと冷凍うどんでは異なります。
茹でうどんの2位になった焼きうどん、これを冷凍うどんで作るのは、お湯を沸かすところからはじめなくてはならず結構な手間がかかります。茹でてあるうどんなら野菜や肉を炒めたフライパンひとつで仕上げることができるので重宝なのでしょう。一方、冷凍うどんで上位になった煮込みうどんとカレー南蛮は、冷凍うどん向きのうどん料理です。煮汁を沸かした鍋に、凍ったままのうどんをポンと放り込んでグツグツ煮ても茹でうどんより伸びにくくコシが残るはずです。茹でうどんと冷凍うどんの特徴をよく理解して、利用者が使い分けているのが分かります。

次に夕食について見てみましょう。図表は2種類のうどんが夕食に登場する波形です。どちらも11月からシーズン(平均TI値より高い時期)に入ります。茹でうどんは3月末までがシーズン。冷凍うどんは2月末までがシーズンです。茹でうどんのほうがシーズンが1ヶ月ほど長いです。冷凍うどんのシーズンの山は槍ヶ岳の様に急勾配です。ゆでうどんは浅間山のようになだらかです。

ちょっと面白いデータを見せましょう。下の図は2007年1年間のうどん料理の出現度と気温の関係を表しています。きれいに正相関しています。

2007年は猛暑の年でしたが、図によりますと気温が上がるに従いうどん料理の登場回数は下がります。1週間の平均気温が10度くらいの12月にはTI 値40。8月の30度ではTI値22。気温が20度上がるとTI値が約20下がる。1度上がるとTI値1下がる勘定です。面白いですね! 暑い季節でも冷やしうどんがあるじゃないか、と思いますが、夏にはそうめんや冷麦、冷やし中華などの強力なライバルが登場するので、うどんは劣勢になるようです。

次の図表は13節気の夕食での茹でうどんと冷凍うどんのトップ3の料理を主婦年齢別に整理した結果です。

うどん料理は若い主婦の家庭の人気料理のようです。温かい汁うどん、煮込みうどん、共に20代主婦、30代主婦の食卓によく登場しています。人気も上々です。和風鍋(ただしうどん利用の鍋です)は若い主婦の夕食にはあまり登場しません。

ここで食卓双眼鏡の登場です。
若い主婦が作る温かい汁うどんを見てみましょう。

★33歳主婦
11月30日(金)
長ねぎ
とろろ昆布
その他の牛肉
濃口醤油
だしの素(本だし等)
ゆで・蒸しうどん(マルちゃん3食入り)

家族構成は30代のご主人と8歳と6歳の小学生の兄弟です。この日はご主人の帰りが遅かったそうで、さっと食べられるうどんメニューにしたようです。牛肉とねぎが入ったシンプルなうどんは子供たちにも好評だったのでは?と思います。

次も若い主婦が作った、煮込みうどんです。

★27歳主婦
12月7日(金)
長ねぎ、ほうれん草、だいこん、にんじん
生しいたけ
昆布
鶏卵
鶏もも肉
天然塩、濃口醤油、本みりん
けずり節(花かつお等)
ゆで・蒸しうどん

こちらは野菜たっぷりで、鶏肉と卵も入った具沢山なうどんです。つゆはけずり節としょうゆ、みりんでとった自家製。この日の食卓はうどんとミネラルウォーターのみですが、手間をかけて栄養バランスだってよさそうです。ちなみに家族構成は20代のご主人と1歳の女の子です。離乳食中でも、こんなうどんなら食べられそうです。
汁うどんも煮込みうどんも、ひとつの鍋で野菜や肉などの具材と麺を一緒に煮ることができるのがいいところ。主食と汁とおかずが一緒にひと鍋でできてしまうので、手間もかからず、片付けもラク。栄養バランスもよいので、主婦にとってはありがたい料理かもしれません。

次にご紹介するのは50代の主婦の和風鍋の食卓です。

★59歳主婦
12月9日(日)
もち
京菜、長ねぎ、白菜、ごぼう、じゃがいも、だいこん、たまねぎ
生しいたけ、えのきだけ、その他のきのこ、干ししいたけ
鶏卵
鶏もも肉、鶏ひき肉
えび
焼きちくわ
鍋つゆ
塩こしょう
生うどん
冷凍うどん
かわり豆腐

鍋は野菜や鶏肉やえびなどいろいろな具が入ったご馳走鍋です。鶏ひき肉は団子にしたのでしょうか。60代のご主人と30代と20代の兄妹がそろった休日の夜、家族そろって鍋をつついたようです。具が減ってきたら、美味しいだしが煮汁に残ったところにうどんを入れて・・・鍋料理を堪能した様子です。生うどんと冷凍うどんの両方が使われているのはどうしてでしょう? もしかしたら、この和風鍋のために用意した生うどんが好評でおかわり! のリクエストがあって、冷凍うどんを足したのかもしれません。冷凍うどんを常備しておくと、こんなときには大変便利です。

同じうどん料理でも、料理によって食卓の様子はずいぶん異なりそうです。例えば、汁うどんや煮込みうどんは、さっと作れてさっと食べられる、忙しいときにはもってこいの料理。家族が揃わず、バラバラに食べるときでも温めなおして食べることもできます。一方和風鍋は、家族が食卓を囲んで食べたい料理です。いろいろな具材から出た美味しいだしを残さずいただくために、うどんが最後に登場します。うどん入りの和風鍋を作る若い主婦が少ないのは、この世代の家族(ご主人)が忙しく、揃って食卓を囲むのが難しいからかもしれません。

それでは次はうどん料理のなかで若い主婦がよく作る温かい汁うどんに注目しましょう。ヘルシーで手軽なうえ、心も身体も温まるうどん料理です。そこで問題です。うどんの出汁を煮干や昆布、鰹節から手作りしている割合は何割でしょう?

答え 9.8%

ではそれ以外ではどんな風にダシをとっているのでしょう?

答え めんつゆ 50.0%  だしの素 24.6%  液体だしの素 4.9%
だしパック 2.5%  インスタント食品 6.6%

かつては出汁から手作りするのが主流でした。それがだしの素に移りました。今やめんつゆが主流になっています。汁うどんには野菜が何種類入っていますか?

答え 1.6品

使用されている野菜ベスト5位は何でしょう。

答え 1位 長ネギ  2位 にんじん  3位 ほうれん草  4位 大根  5位 白菜

野菜以外にも色々な食材が入っています。

豚肉の薄切りなど肉類    24%
油揚げ、豆腐        21%
卵             31%
かまぼこ、なると、ちくわ  15%
わかめ、とろろ昆布     13%

これら全ての食材をあわせると7.3品の食材(調味料含む)が使われています。この数字、多いと思いますか? 少ないと思いますか? 比較のために次のデータを出しましょう。

汁そばの使用食材数     7.7品
醤油ラーメンの使用食材数  5.2品

汁うどんに入る使用食材数は、そばとほぼ同じです。ラーメンよりは2品多いです。
この差は、具として入る食材の種類数の違いではなく、汁やスープに使う調味料の数の違いなのでは、と予測されます。そばやうどんの時には市販のめんつゆだけに頼らないで、さらに醤油やみりんを加えてオリジナルなつゆを作っている主婦が多いのです。一方ラーメンのときには、麺についてくる袋入りのスープの素をお湯でとくだけで、ひと手間加えません。
たとえば正統派つゆの作り方をしている50歳主婦の場合、けずり節+濃口醤油+本みりん+日本酒。
34歳の主婦は、めんつゆ+濃口醤油+料理用日本酒+本みりん。
29歳主婦は、めんつゆ+だしの素+昆布茶+天然塩。
39歳主婦は、アジシオ+濃口醤油+上白糖+だしの素+洋風コンソメ+めんつゆ。

このように、作り手のよって調味料の組み合わせ方が違います。
汁うどんと言ったら手軽でだれでも簡単に作れるメニューのようですが、意外や単純ではありません。

12節気と13節気にわたってさまざまな角度から"うどん"を観察してきました。面白い事実がいくつも発見されました。うどんメニューの多様さに驚き、家庭料理としての利便性を実感したのではないでしょうか。
そして今はうどんシーズンの真っ盛り。身も心も温まるうどん料理を楽しんでいただきたいものです。

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