食卓双眼鏡

食卓双眼鏡

第11回 13節気(11月下旬~12月23日頃) メニュー編:しゃぶしゃぶ

しゃぶしゃぶのシーズンは、2007年では10月から始まります。2007年から2008年にかけてしゃぶしゃぶは、シーズンの2つのピークの山を作っています。11月の中旬(第一の山)と1月の中旬(第二の山)です。第一の山は例年ですと12月から年末にかけて山ができるのですが、2007年は一ヶ月以上、早い時期に山ができました。
11月26日~12月2日の週に、しゃぶしゃぶのTI値が落ちていますね!
「何故でしょう?」

答え この週、温度が急速に下がり(図表参照)、和風鍋が食卓を席巻したからです。

食卓では鍋合戦が繰り広げられています。

次の図表は13節気(11月26日~12月23日頃)の夕食に、しゃぶしゃぶがどれだけ登場しているかを主婦年齢別に整理した結果です。若い主婦の夕食にはあまりしゃぶしゃぶが出ないようです。人気度は年齢によって大きく違いがありません。

「若い家庭にもっとしゃぶしゃぶを食べてもらおう!」そんな気持ちで、もう少し食卓を覗いてみましょう。
皆さん、しゃぶしゃぶをどうやって作っているのでしょう? ここで問題です。
しゃぶしゃぶに入る精肉は牛肉が多いですか? 豚肉が多いですか?

答え 豚肉 77%  牛肉 32%

圧倒的に豚肉です。この結果を関西の方が見られたらどう思うでしょう?
「関西ではしゃぶしゃぶに豚なんか使わない」ときっと言うでしょう。
食MAPは関西でも試験的に行われています。その結果によると、さすがに関西のしゃぶしゃぶは牛肉が多いです。でも、もう一つ面白い結果が出ました。
「関東も関西も若い主婦の家庭ほどしゃぶしゃぶに豚肉がよく使われる」
これって...、大発見だと思いませんか?

話を元にもどします。上記の豚肉と牛肉の使用率をあわせると110%です。牛肉と豚肉を併用している家庭が1割あるわけです。
食卓双眼鏡を使って、実際の食卓の様子を覗いてみましょう。
56歳の主婦は、牛豚を併用したしゃぶしゃぶを作っています。

★56歳主婦
12月15日(土)
春菊、長ねぎ、白菜、万能ねぎ、しめじ、えのきだけ
しゃぶしゃぶ用牛薄切り肉
しゃぶしゃぶ用豚薄切り肉
ポン酢、味ポン、ゆずポン等
しゃぶしゃぶのたれ
ゆできしめん
木綿豆腐

ご家族は50代のご主人と20代の息子さんです。牛肉と豚肉を使うのは、両方の味わいを楽しみたい、という家族からのリクエストなのでしょうか? 牛肉だけよりお財布に優しいから、という理由もあるかもしれません。それにしても6種類の野菜と木綿豆腐、きしめんまで食べたら、これだけで栄養満点、おなかいっぱいになったことでしょう。

次に紹介するのは、49歳の主婦の作ったしゃぶしゃぶです。

★49歳主婦
12月7日(金)
もち
キャベツ、万能ねぎ、えのきだけ、
しゃぶしゃぶ用豚薄切り肉
ウインナーソーセージ
ポン酢
しゃぶしゃぶのたれ
春雨・マロニー
絹ごし豆腐

ウインナーソーセージが入ったしゃぶしゃぶとは面白いですね。ご家族は40代のご主人と15歳の息子さんです。食べ盛りの男子高校生がいる家庭ならではのメニューではないでしょうか。

「しゃぶしゃぶ」というと、牛肉と豚肉のごく薄切りにした肉を箸でつまみながら、鍋の中でゆらゆらさせて火が通ったところを食べる。そんな姿をイメージしてしまいますが実際の食卓での様子はずいぶん違うようです。肉は薄切り肉だけでなく、鶏肉を入れる家庭もあります。特に鶏ひき肉が10%近く入っています。鶏肉の入ったしゃぶしゃぶは人気100パーセント。因みに牡蠣や鯛、たらなどの魚介類を入れている食卓も10%近くあるのです。しゃぶしゃぶとひと口にいっても、実にさまざまです。

再び質問に戻ります。しゃぶしゃぶのタレはポン酢が多いですか? しゃぶしゃぶ専用タレが多いですか?

答え ポン酢 94%  しゃぶしゃぶのタレ 29%

圧倒的にポン酢がよく使われています。両方を併用している家庭が2割以上あります。変わったところでは、ドレッシングを使っている家庭が6%あります。そのほとんどが和風ドレッシングです。
37歳の主婦の食卓です。

★37歳主婦
12月8日(土)
京菜、長ねぎ、白菜、えのきだけ
しゃぶしゃぶ用豚薄切り肉
ポン酢
市販の和風ドレッシング
木綿豆腐
しらたき、糸こんにゃく

暑い時期には、豚しゃぶ肉にさっと火を通してから冷たく冷やした豚しゃぶと生野菜で作ったサラダが人気です。そのときに使ったドレッシングを、温かいしゃぶしゃぶ料理でも使用しているのではないでしょうか? ポン酢のさっぱりした味に飽きたとき、ドレッシングのコクある味と風味がウケルのかもしれません。温野菜サラダだと思えば、相性が悪いはずはありませんね。

では質問です。しゃぶしゃぶには何種類の野菜が入っているでしょうか?

答え 4品

結構な種類の野菜が入っています。つづいて質問です。使われる割合の高い野菜ベスト5を答えてください。

答え 1位 白菜  2位 長ネギ  3位 えのきだけ  4位 京菜(水菜)  5位 生しいたけ

野菜以外では豆腐やしらたき・糸こんにゃくも必ずといってよいほど入っています。麺類が3割の確率で入っています。餅が1割の確率で入っています。
先に触れたように鶏肉や魚介類が入ることもあるので、これでは「水炊き」や「寄せ鍋」を思い浮かべてしまいます。
こうしてみると家庭で食べる「しゃぶしゃぶ」というのは、専門店などで食べるそれとは別物の料理だということが分かります。家庭版しゃぶしゃぶは、煮汁に味をつけず、加熱時間が短い薄切り肉や魚介、野菜をさっと煮て、銘々が取り分けたところでポン酢などで味付けして食べるもの、のようです。
何にせよ、作り手と食べ手がしゃぶしゃぶだと思っていれば、それはしゃぶしゃぶなのです。

さて、若い家庭にもっとしゃぶしゃぶを食べてもらうには? という課題に対して。
まず、若い主婦の家庭のしゃぶしゃぶほど野菜の入る種類数が多くなっています。また若い主婦の家庭ほど豚肉が使われる割合が高いことも先ほど述べました。野菜と豚肉をより美味しく食べる工夫が、しゃぶしゃぶの普及には必要のようです。
しゃぶしゃぶというのは、肉の余分な脂やあくを落として、あっさりといただけるのが特徴ですが、そのぶん淡白で単調な味わいになりがちです。だから、肉を複数種類使ったり、タレもポン酢や専用のしゃぶしゃぶのたれ、ドレッシングなどいろいろ使って、味に変化を出しているのではないでしょうか。
そこで、いつものタレにひと工夫する提案です。

  1. みじん切りのねぎをたっぷり加える。もっとパンチがほしければ、にんにくやしょうがのすりおろしを加えてもよいでしょう。
  2. 辛味や風味でアクセントをつける。粗挽きの黒こしょうや、七味唐辛子、ゆずこしょう、豆板醤を加えると、ピリリと変化が出ます。
  3. ごま油やオリーブオイルを加える。ポン酢だけでは物足りないとき、コクがでておすすめです。

かつてはハレの日のご馳走というイメージがあったしゃぶしゃぶ。現在でも専門店で食べれば高級料理ですが、家庭では日常的な鍋料理のひとつとして柔軟な発想で食べられているようです。

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