食卓双眼鏡

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第8回 12節気(10月中旬~11月下旬頃) メニュー編:鍋焼きうどん・煮込みうどん

鍋焼きうどんと煮込みうどん。この2つのうどんメニューの違いを的確に説明できる方は、専門家でもあまりいないでしょう。例えば、食卓に登場する時期はどう違うか、判りますか? 図がそれです。 全くといってよいほど一緒の波形をしています。

鍋焼きうどんと煮込みうどんの食卓登場頻度は、お盆の時期が1年の一番の底です。9月から急速に食卓に登場します。1年の最大の山は、両メニューとも 12月の17日週。ちょうど冬至の週にあたります。正月時期は少し谷になります。2月に入って少し登場頻度を上げ、2月下旬に再び山をつくります。そして3月以降、いくつかの谷と山を繰り返しながら食卓から姿を消していきます。
12月の最大の山のTI値は、鍋焼きうどんが11、煮込みうどんが7です。やや煮込みうどんの登場頻度が高くなっています。

2つのうどんメニューは、それぞれどんな特徴があるのでしょうか?
使う食材、味付けに違いがあるでしょうか?
以下、問答形式で見てみましょう。

問 使う食材(調味料含む)はどちらが多いでしょう?

答え 鍋焼きうどん9.5品、煮込みうどん9.2品
鍋焼きうどんのほうが0.3品多くなっています。その内訳を調べてみましょう。

問 鍋焼きうどんには入っているが、煮込みうどんに入っていない食材は「な~に?」

答え もち(使用割合33%)天婦羅(同43%)魚介練り製品(同52%)
以上の3つの食材は煮込みうどんには入っていません。
鍋焼きうどんはトッピングの豪華さが勝負どころのようです。次の質問です。

問 鍋焼きうどんに入れる天婦羅の手づくりの割合は?

答え 天婦羅粉をつけて手作り5%、冷凍の天婦羅5%、惣菜の天婦羅33%
圧倒的に惣菜の天婦羅です。うどんを煮る調理と天婦羅を揚げる調理を一度にこなすことはなかなか骨の折れる仕事のようです。次の質問です。

問 野菜はどちらがたくさん入っていますか?

答え 鍋焼きうどん2.9品、煮込みうどん3.8品
煮込みうどんに1品野菜が多く入っています。煮込みうどんは野菜が豊富なうどんメニューなのです。その内訳は以下の表の通りです。

問 肉類はどちらが多いですか?

答え 鍋焼きうどん0.1品、煮込みうどん0.6品
煮込みうどんのほうが0.5品多くなっています。では肉の種類は?
鍋焼きうどんは全て鶏肉です。煮込みうどんは豚に薄切り肉が7割を占め、残り3割が鶏肉です。鍋焼きうどんがトッピングで勝負なら、煮込みうどんは、野菜と、野菜に相性の良い豚肉が勝負どころです。では、どちらのメニューの人気が高いでしょう?

答え 鍋焼きうどんの人気度52%、煮込みうどんの人気度66%
煮込みうどんに軍配が上がりました。「何故?」
そこで以下のような様な勝手な解釈をしました。
「鍋焼きうどんは大人好みの外食の味」
「煮込みうどんは子供が大好きの家庭の味」

調味について質問です。

問 味噌仕立ての割合は?
答え 鍋焼きうどん 5%  煮込みうどん 30%
鍋焼きは醤油仕立が基本です。煮込みうどんは味噌や醤油などバリエーションがあります。煮込みうどんはそれだけ郷土の味や家庭の味など、バリエーション豊富な料理なのでしょう。うどんメニューには、忘れてはならない食材があります。卵です。最後の質問です。

問 どちらが卵の利用が多いでしょう?

答え 鍋焼きうどん86% 煮込みうどん34%

そういえば、鍋焼きうどんに卵は不可欠かもしれません。黄身がとろっと半熟のところを崩さないように食べるのが、鍋焼きうどんの楽しみでもあります。

それでは、食卓双眼鏡の出番です。
代表的な煮込みうどんを作っている56歳の主婦の食卓を紹介しましょう。

★56歳主婦
11月4日(日)
長ねぎ
白菜
里芋
大根
にんじん
生しいたけ
しめじ、本しめじ
豚の薄切り肉
味噌
ゆできしめん、ほうとう

材料は10品目、そのうち野菜は7種類です。肉は豚肉で、味付けは味噌仕立てです。
作り方までは食MAPではわからないので、想像のレシピを加えると、

  1. 里芋、大根、にんじんは食べやすい大きさに切って、大きな鍋に入れ水を加えて煮ます。
  2. 沸騰したら火を弱め、野菜が柔らかくなるまで煮て、白菜、ねぎ、きのこ類を加え、さっと煮ます。豚肉も加え、あくを除いて少し煮ます。
  3. うどんを加え煮立ったら味噌をときいれて、出来上がり。丼に盛りわけていただきます。

ちなみに、このとき同時に食卓にのったのは、長芋とめかぶ、納豆の和え物、りんご、お茶です。ご家族は50代のご夫婦に高校生の女の子という構成。手軽に作れて、栄養バランスも整った献立です。

鍋焼きうどんの方はどうでしょう。
49歳主婦の方の食卓です。

★49歳主婦
11月21日(水)
もち
長ねぎ
白菜
鶏卵
めんつゆ
惣菜の天ぷら
ゆできしめん、ほうとう

材料は8品目、そのうち野菜は2種類です。惣菜の天ぷら、もち、卵がトッピングにのっています。この日は主婦と高校生の男の子と二人きりの食卓でした。ご主人が家で夕食を取らない日だったので、手早くできて、ボリューム満点の一品メニューにしたようです。
鍋焼きうどんは本来は一人前ずつ小鍋で煮立てて作りますが、ここは家庭版ということで、いっぺんにおふたり分をつくったのではないでしょうか?
想像の作り方で紹介しますと・・・

  1. 土鍋に水を沸かし、めんつゆで味を調えて、白菜、長ねぎを加えて煮ます。
  2. ゆでめんを加え煮立ったところで火を弱め軽く煮込みます。ここに卵を割りいれ、天ぷら、別に焼いておいたもちを加え、ふたをして火を止めます。
  3. そのまま食卓に運び、熱々をとりわけながらいただきます。

煮込みうどんも鍋焼きうどんも、どちらも一品で栄養のバランスが取れるメニューです。しかもひとつの鍋で作ることができて、後片付けもラクなので、作り手にとっては嬉しいメニューでもあります。そしてどちらも、冷めるとどんどんふやけてのびてしまうので、作りたてをいただくのが一番です。家族が食卓にそろったところで、熱々をふーふーいいながら食べるのがなにより美味しい食べ方のコツといえそうです。

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