食卓双眼鏡

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第6回 11節気(9月下旬~10月中旬ごろ) 材料編(1):こんにゃく

こんにゃくはお盆ごろを底に9月から10月にかけて急速に食卓に登場します。ここで質問です。2007年1年間でこんにゃくが使われたメニューの種類数をお答えください。

答え 108種類

9月下旬から10月中旬の11節気には、こんにゃくは51種類のメニューに使われています。わずか1ヶ月足らずに1年間の半分のメニューに使われている勘定です。11節気はこんにゃく料理のシーズンといえましょう。

では、どんな料理にこんにゃくは使われているのでしょうか?

1位 おでん(TI値 9.3)
2位 豚汁 (TI値 4.7)
3位 野菜の炊き合わせ(TI値 4.3)

最も登場回数が多い「おでん」のTI値は9.3です。つまりこの時期、関東上空から夕食卓を覗くと約100世帯に1世帯がこんにゃくを使ったおでんを楽しんでいることになります。
2位の「豚汁」には「意外!」とお感じになる方も多いでしょう。「なるほど!」とお感じになる方も多いでしょう。ちなみに同じく野菜たっぷりの汁物である、「けんちん汁」とあわせるとTI値は7.3にもなります。
第3位は「野菜の炊き合わせ」です。この時季ですと、にんじんやさといも、ごぼうなどの根菜にこんにゃくが入った煮物になっています。同じく野菜の煮物で鶏もも肉と根菜をこっくりと煮た「筑前煮」にもこんにゃくはよく使われています(TI値は1.7)。

これ以外のこんにゃく料理の一覧を見ると、以下のような料理名が並びます。

おから料理
ひじきの煮物
きんぴら料理
昆布の煮物
がんもどきの煮物
もつ煮
切干大根の煮物
肉じゃが
さといもの煮物
和風鍋

日本人にとっての「おふくろの味」ばかりです。
一見、こんにゃくが入っていなくても成立しそうな料理ですが、こうした和風のお惣菜を作るときには控えめながらよい仕事をするようです。独特の弾力と食感にくわえ、他の素材や調味料の味を煮含んでくれるので、和風料理の名脇役といえましょう。特に、秋から冬にかけて美味しくなる根菜(大根、にんじん、里芋、ごぼう、れんこん)などを使った料理との相性がよいようです。

ところが、こんにゃくを主役にした料理になると、その人気は芳しくありません。「こんにゃくの炒り煮」と「こんにゃくの田楽」の人気度は、それぞれ29%、45%です。
さきほどこんにゃく料理の上位にランクインした、おでんの人気度は81%、豚汁82%、けんちん汁90%、野菜の炊き合わせ72%、筑前煮86%と比較すると、残念な結果です。
材料が「こんにゃくと調味料だけ」という料理のとき、こんにゃくに物足りなさを感じるからでしょうか。それ自体に味という味がないこんにゃくは野菜や肉などと一緒に登場してこそ、その持ち味を発揮するのかもしれません。

次に、図表は11節気のこんにゃく料理を主婦の年齢別に整理した結果です。

年代  こんにゃくを使用したメニュー数
20代  8
30代  19
40代  29
50代  37
60代  17

こんにゃく料理のレパートリーが一番多いのは50代の主婦です。この時期37種類のこんにゃく料理を夕食卓に出しています。おふくろの味を得意とするのは、やはり熟練主婦でした。レパートリーが一番少ないのは20代の主婦です。20代のモニターさんの数が少ないことも影響していますが、それにしてもわずか8種類は少し寂しい。

それでは、こんにゃく使いが上手な主婦から、こんにゃくの美味しそうな料理法を教えていただきましょう。若い主婦の方の参考になるかもしれません。
まずは、「牛肉と野菜の和風煮」です。

★54歳主婦
10月6日(土)
長ねぎ
里芋
牛薄切り肉(切り落とし、こま切れ含む)
濃口醤油
上白糖
料理用日本酒
けずり節
こんにゃく

この料理、煮汁がたっぷりなら、山形の郷土料理「いも煮」だったのかもしれません。牛肉とかつおダシのうまみを含んだこんにゃくと里芋が美味しそうですね!鶏肉を加えて野菜とこんにゃくを煮る和風煮物はよく見かけますが、牛肉で煮るのもおすすめです。
こんにゃくというとご飯のおかずにならないイメージですが、このようにしょうゆと砂糖の甘辛い味付けで肉類も入れてこっくりと煮ると、若い人にも好評の煮物になりそうです。

「イカと野菜の和風煮」
★59歳
10月7日(日)
里芋
大根
昆布
イカ
濃口醤油
三温糖
みりん風調味料
料理用日本酒
こんにゃく

今度は、イカと昆布のうまみがこんにゃくに染み込んでいそうな料理です。イカと里芋、イカと大根、というのは相性がよい組み合わせですが、イカとこんにゃくも間違いなく相性がよいはず。50代主婦は定番の和風煮物に、こんにゃくをさりげなく使うのが上手です。

「野菜のそぼろ煮」
★62歳
10月7日(日)
じゃがいも
しょうが
たまねぎ
にんじん
冷凍のいんげん
豚挽き肉
その他のサラダ油
ごま油
濃口醤油
グラニュー糖
うまみ調味料
本みりん
料理用日本酒
めんつゆ
こんにゃく

これはどんな風に調理されたのでしょうか?おそらく「豚挽き肉をしょうがのみじん切りと一緒に油で炒め、細かく切った野菜とこんにゃくを加えてさらに炒めてから、醤油、砂糖、日本酒、みりんなどの煮汁で炒め煮した」のではないかと思います。野菜それぞれの食感と、こんにゃくの食感と、歯ごたえの違いが楽しめそうな料理です。甘辛く味付けされた野菜と挽き肉のそぼろは、ご飯にのせて食べると止まらない美味しさだったにちがいありません。

モニター主婦のこんにゃく料理を見ると、「え? こんな料理にこんにゃくをつかうの?目からウロコ!」というような驚きメニューはありませんでした。逆に、オーソドックスな食べ方をしていることが分かり、こんにゃくの特性をよく理解されていることを実感しました。そして、こんにゃくの特徴としては、食物繊維が多くエネルギー量が低いこともあげられます。食欲が増して、ついつい食べ過ぎてしまうこの時季には、こんにゃく料理がおすすめです。長期保存もできるので、台所にいつも常備して、ヘルシーな「おふくろ料理」の腕を振るってみてはいかがでしょう。

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