食卓双眼鏡

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第4回 10節気(8月お盆過ぎ~9月20日頃) 材料編(2):味噌料理

野菜炒め、マーボ豆腐、ナスの和風煮、そうめん、おじや・雑炊、豚汁、野菜のごま和え、ギョーザ・・・これらに共通して使われている食材があります。何だと思いますか?
「味噌」です。
10節気のほぼ一ヶ月の間だけで、103種類のメニューに使用されています。
醤油、天然塩、だしの素に次いで使用率の高い調味料です。
「そうめんやギョーザにも味噌を入れるの?」
と思われる方がいるかもしれませんが、意外な料理に使われる場合も少なくありません。一番使用されているメニューは、なんと言っても「味噌汁」ですが、それ以外でもさまざまな料理の味つけや風味づけで活躍しています。日本人にとって欠かせない調味料です。

味噌の使われ方を、年代別に見てみると面白い傾向が発見できました。
下の数字を見てください。

(10節気における、味噌の年代別M値)
20代  13
30代  56
40代  48
50代  49
60代  20

M値というのは、味噌が何種類のメニューに使われたかを表す指標です。メニュープロデュース力と呼んでいます。味噌のメニュープロデュース力が最も高いのは30代の主婦です。最も低いのは20代の主婦です。30代の主婦の4分の1程度にすぎません。
40代と50代はそれぞれ48と49で健闘しています。60代になると20に減ってしまいます。30代から50代にかけてのベテラン主婦が味噌料理を得意としています。主婦暦の浅い20代の主婦は味噌の使い回しが不得意のようです。

それぞれの年代の得意な味噌料理を紹介します。
まず味噌使いがもっとも巧みな30代。

★36歳
8月27日(月)
豚肉と野菜の味噌いため(なす、ピーマン、豚切り落とし肉、にんにく、味噌、みりん、日本酒、豆板醤)
かき玉汁(鶏卵、醤油、天然塩、だしの素、片栗粉)
ツナサラダ(レタス、たまねぎ、きゅうり、低カロリーマヨネーズ、ツナ缶)
チキンカレーライス(残り物)⇒主人だけ食べる
かけごはん(しらす)
昆布・海草の佃煮
牛乳
お茶

旬の野菜と豚肉の味噌炒めは、どの世代でも人気のメニューです。この30代の主婦は、にんにくやしょうがで風味をつけ、豆板醤や鷹の爪などで辛味を出しています。食欲増進のスタミナ料理が得意のようです。
このご家庭では、炒め物やサラダに加え、ご主人<34歳>だけがチキンカレーライス(残り物)を食べています。34代の男性といえば、まだまだ食欲旺盛な年齢。そこで1品プラスするための残り物利用はご主人にとって有難いことでしょう。

次は、40代の主婦です。この世代の主婦の得意技は、マーボ豆腐やマーボなすのような複雑な味の料理に、味噌を隠し味的に使うこと。

★41歳
8月28日(火)
マーボ豆腐(長ネギ、しょうが、にんにく、豚挽き肉、ごま油、味噌、醤油、砂糖、日本酒、片栗粉、オイスターソース、豆板醤、こしょう、木綿豆腐)
いかの和風焼き(味付けの魚介類、油)
野菜の炊き合わせ(ピーマン、なす、きのこ、ちくわ、ごま油、醤油、日本酒)
納豆(きゅうり、みょうが、めがぶ、なっとう)、
ご飯(白米+五穀セット)
牛乳(牛乳、低脂肪乳、ココア)
麦茶

中華料理のプロがつくるのなら、マーボ豆腐もマーボなすも、味噌の代わりにテンメンジャンという、中国の甘味噌を使うのが普通です。この主婦はオイスターソースや豆板醤という本格中華調味料を使いつつ、味噌に関しては、食べなれた味のものをあえて選んで使っているのではないでしょうか。出来上がったマーボ豆腐はきっと「我が家の味」で好評だったでしょう。
本題とは話が少しそれますが、こちらのご家庭は、5人家族。中学生1人と小学生2人の三兄弟です。食べ盛りの息子さんのために、おかずの種類も豊富です。さらにご飯に雑穀を混ぜていたり、牛乳にローファットミルクとココアを混ぜた手作りドリンクを家族そろって飲んでいたり、健康的で栄養満点の食卓が印象的です。

続いて、50代の主婦です。こちらは「野菜がメインの和風料理に味噌を使う」のがお得意のようです。

★54歳主婦
8月29日(水)
野菜の和風炒め(青しそ、なす、ピーマン、菜種油、減塩醤油、味噌、三温糖
ひりょうずの煮物(がんもどき、小松菜、減塩醤油、三温糖、日本酒)
ゆでブロッコリー
浅漬け、一夜漬け(セロリ、減塩醤油、三温糖、米酢)
ごはん
ドーナッツ
ウーロン茶

なすとピーマンの炒め物は、夏の定番料理です。この主婦は、夏の定番料理にあえて肉類は加えていません。その替わりに青じそで夏らしいさわやかな炒め物を作っています。他の料理を見ても、肉や魚などの動物性たんぱく質が使われていません。調味料にも減塩醤油や三温糖を選ばれていたり、健康面にも配慮されているのでしょう。この主婦以外でも、50~60代の主婦が作る料理は、ほかの世代よりあっさりとしてヘルシーなメニューが多いです。
この主婦の食卓をよく見ると、ドーナッツをご主人とお二人で食べています。「食事のメニューにドーナツなんて!」など硬い話はなしです。ほほえましい食卓風景が想像されます。

次にご紹介する60代の主婦の食卓は「ヘルシーな日本型食事」の好例です。

★64歳
魚の味噌煮(さば、味噌、三温糖、本みりん、料理用日本酒)
高野豆腐の煮物(めんつゆ、高野豆腐)
かぼちゃの含め煮(かぼちゃ、天然塩、濃口醤油、三温糖)
たくわん漬け
納豆(長ねぎ、納豆)
ご飯
お茶

しみじみとした和風の献立が並んでいます。さばの味噌煮といえば、味噌料理の定番かもしれません。60代がつくる味噌を使った料理の多くは、昔ながらの「おふくろの味」「ほっとする味」が多いような気がします。

締めくくりに20代の主婦の味噌の使い方を紹介しようと思いましたが、オッと目を引くような味噌使いは、10節気の食卓の中で見当たりませんでした。
味噌汁や豚汁など、汁物での利用がほとんどで、他には野菜と肉の炒め物や野菜炒め煮などに利用するくらいなのです。とはいっても、味噌は、味噌汁で味わうのがもっとも正当で、おいしい調理法なのかもしれませんが・・・

それでは最後に、夏バテも吹き飛びそうな、味噌を使った常備菜をご紹介します。
火を使わないのが手軽ですし、一度作ってしまえばいろいろな料理に活用できます。

「にんにく梅味噌」
(材料)
にんにく(丸ごと)・・・1個
味噌(好みのもの)・・・100グラム
砂糖・・・・・・大さじ3
梅干し(種を除いたもの)・・・2~3個分
青じそ、しょうがのみじん切り・・・適量
白すりごま・・・・・・大さじ2

(作り方)

  1. にんにくは子房に分けず、丸のまま電子レンジで1分加熱する。(やわらかくならなければさらに20~30秒ほど加熱する)
  2. にんにくはうす皮をむいて、実だけ取り出し、フォークなどでつぶす。
  3. ボウルなどに、つぶしたにんにく、味噌、砂糖、梅干し、青じそ、しょうが、すりごまを加えて混ぜ合わせる。

電子レンジで丸ごと加熱したにんにくは、臭いが抑えられ、味もマイルドになるので、このくらいたっぷり使っていても大丈夫。
そのまま白いご飯にのせたり、冷やしたきゅうりに添えていただくのもおいしいです。あとは、炒め物の味つけにもお勧めです。お酒少々でといてから、仕上げに加えれば、風味豊かなスタミナ満点の炒め物の出来上がり!

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