食卓双眼鏡

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第3回 10節気(8月お盆過ぎ~9月20日頃) 材料編(1):さんま

「秋刀魚」と漢字で表すように、秋の代表的な魚です。10月になると脂がのって最も美味しくなるといわれています。
食MAPのデータによると、さんまが食卓に登場し始めるのは8月で、それから一気に9月上旬にピークを迎えます( TI値78.1)。まさに10節気(8月20日~9月23日)の食卓に欠かせない味覚です。そして秋に向かうとTI値も下降し、10月末にはピークの半分まで落ち込みます。
(下図参照)

さんまが最も食べられる時季が10節気。このときには、どのくらいの人がさんまを味わったのでしょうか。
・・・答え 54パーセント
モニターの半分以上が、この1ヶ月の間に一度はさんまを食卓に登場させています。
8月になって最初に店頭に並ぶさんまは、北海道東部沖で水揚げされたものがほとんどです。姿は細身、味もアッサリしています。お値段はまだ高め。それでも、初がつおが珍重されるのと同様に「初さんま」を見かけると、日本人は "はしり"の味を堪能したくなるようです。

追伸
生のさんまが店頭に出回る8月~11月の4ヶ月間で、一度でも食べた家庭はどのくらい?
・・・答え 全モニターさんのうち72パーセント
北海道から南下し、三陸や房総沖へ向かうにつれ、脂を蓄えて味も最高潮になったさんまは、10月にはお値段も下がってきて、ますます身近な魚になります。なかには、一週間に二度三度と食べる人もいるようです。

そんな、さんまをよく食べるお宅の食卓をのぞいて見ましょう。
10節気の間にさんまを最も多く食べたのは、51歳の主婦で、9回も食べています。
最初に食べたさんま料理は、シンプルな塩焼きです。

★51歳
8月25日
塩焼き(さんま、大根、天然塩)
えびチリ(長ねぎ、レタス、しょうが、にんにく、卵、えび、サラダ油、塩、醤油、砂糖、酢、片栗粉、春雨、豆板醤)
おから料理(長ねぎ、にんじん、さやいんげん、干ししいたけ、ちくわ、醤油、みりん、だしの素、昆布茶、油揚げ、おから)
キムチ
納豆
ところてん
ビール
ごはん

さんまの美味しさを味わうなら、まずは「塩焼き」ですね。このご家庭でも大根おろしをたっぷり添えて味わった様子です。さんまにふりかける天然塩が憎らしい!
さんまだけでも十分なご馳走ですが、この主婦はえびチリからおから料理まで手作りして食卓をにぎわせています。キムチに納豆、ところてんもあって、酒の肴もご飯のおかずも十分です。「居酒屋料理」といったら失礼にあたりますか?
きっとこの日の宴は長く続いたことでしょう。

このご家庭、4日後には、煮魚にしてさんまを楽しんでいます。

8月29日
煮魚(さんま、しょうが、ごま油、山椒、酒、みりん)
マーボー豆腐(長ねぎ、しょうが、にんにく、豚挽き肉、サラダ油、ごま油、醤油、味噌、木綿豆腐、絹ごし豆腐)
きゅうり
もずく
ところてん
ごはん
ビール

しょうゆベースで甘辛く煮ただけでなく、しょうがやごま油、山椒の風味を利かせて、パンチのある煮魚を作っています。さらにマーボー豆腐も作っています。この方は、和風料理も中華料理もきっと手際よくお作りになるのでしょう。この日以外の食卓でも、食卓にはおかずが4~6品は並んでいます。さすが、ベテラン主婦!
このご家庭では、翌日の30日にも、一日あけた9月1日にも、さんまを食べています。結局、この主婦が1ヶ月で作った8回のさんま料理の内容は、塩焼き3回、煮魚4回、つみれ汁2回、魚介のすり身揚げ1回でした。さんま料理の達人とお呼びしたいような方です。

他のご家庭では、さんまはどのように料理して食べられているのでしょうか?
・・・「塩焼き」がダントツの人気です。
8月にさんまを食卓に載せた家庭のうち、77パーセントのご家庭は塩焼きで食べていました。
塩焼き以外のメニューを見ると、手巻きずし、握りずし、刺身、煮魚、唐揚げ、蒲焼き、照り焼き、つくねなどがあります。
9月になると、塩焼きで食べるご家庭は74パーセントと少し減りますが、メニュー数は逆に2倍に増えます。
8月のM値10⇒9月のM値24  注)M値:さんまが使われたメニューの種類数
8月に登場したメニュー以外に、丼・重もの、炊き込みご飯、つみれ汁、味噌汁、バター焼き、酢じめ・・・なども加わりレパートリーの幅が増えるようです。どのご家庭でも、まずは丸ごと一尾を塩焼きにして味わい、その後は様々な料理に形を変えて旬の味覚を楽しんでいる様子が伺えます。

つぎに、年齢別に見てみると・・・・
さんまを食卓に乗せる回数が多いのは、圧倒的に50代の主婦ということがわかります。一番人気の塩焼きの出現度(TI値)をみると、20代と50代では約7倍の開きがあります。

(10節気のTI値)
20代 2.5
50代 16.4

さらに、さんま料理のレパートリーも多いのも50代です。20代の主婦と比較すると、さんま料理の種類数(メニュープロデュース力:M値)は2倍以上です。
若い主婦家庭は、さんま料理が苦手なのでしょうか?
実は、さんま料理の人気度は50代モニター家庭より高いのです。
人気が高いが料理法を良く知らないのが20代モニターさんの家庭の実情のようです。台所を任されて日が浅い20代主婦は、さんま料理のレパートリーが、ベテラン主婦に比べまだ少ないだけのようです。
そんな中、さんまをフル活用している、20代の主婦を見つけました。

★28歳主婦
9月15日(土)
つみれ汁(さんま、長ねぎ、しょうが、味噌、けずり節、片栗粉、日本酒)
魚介の刺身(さんま、みょうが、濃口醤油、練りわさび)
魚の塩焼き(さんま、天然塩、濃口醤油)
ごはん

まさにさんま尽くしの食卓です。すべての料理を、2歳のお子さんを含めた家族全員が食べ、全員から喜ばれ、好評を得ています。

さんまといえば、日本において最も豊漁が期待される魚です。旬のさんまは100パーセント国産で産地偽装などとは無縁です。安心して食べられ、体にも家計にも優しいさんまをもっと積極的に食べたほうがよいとは思いませんか?

最後に、私からのお勧めさんま料理をご紹介します。
さんまをハーブと一緒にオリーブ油で煮るだけ、の簡単料理です。
油でじっくり煮ることで、さんまの余計な脂がでて、あっさりした味わいになります。ハーブの香りが魚くささを消すので、これがさんま!?と思うほど、上品な風味に。
たっぷりのサラダ野菜と一緒に、どうぞ。

「さんまのコンフィ」
(材料)
さんま・・・・4尾
塩・・・・・・小さじ2
お好きなフレッシュハーブ(ローズマリー、タイム、オレガノ、ローリエなど)・・・適量
オリーブ油・・・適量

(作り方)

  1. さんまは頭を切り落とし、内臓を除き、半分の長さに切る。流水で洗う。
  2. 水気をふき取り、塩をまぶし10分置く。水気が出たら、ペーパータオルでふき取る。
  3. フライパンにさんまを並べ、オリーブ油をひたひたになるくらい注ぐ。火をつけ、煮立つまで中火、その後は弱火にしてフツフツするくらいの火加減で20分煮る。火を止めるときに、水気をふき取ったハーブを加え、そのままあら熱が取れるまで冷ます。
  4. ほんのり温かいうちに食べても良いし、冷たくても美味しい。

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