食卓双眼鏡

食卓双眼鏡

第2回 10節気(8月お盆過ぎ~9月20日頃) メニュー編:野菜カレーライス

カレーと一口に言ってもさまざまですが、食MAPでは、7種類に分類しています。

  • ポークカレー
  • チキンカレー
  • ビーフカレー
  • 挽肉のカレー
  • 野菜カレー
  • ドライカレー
  • シーフードカレー

一番食べられているのはポークカレー(年間平均TI値12.2)で、一年を通して最も多く食卓に登場しています。次いで、チキンカレー、ビーフカレーと続くのですが、10節気で注目したいのは、野菜カレーです。カレーは季節を問わず人気のメニューですが、野菜カレーは食卓登場回数で夏に明らかな山を作ります。
※図は野菜カレーの夕食卓の登場回数です。

食卓に多く登場するだけでなく、実際に食べた家族からも好評を得ています。
10節気における、各種カレーの人気度を高い順に配列すると...

順位 メニュー小分類名称 全体平均
1位 挽肉のカレーライス 82.3%
2位 野菜カレーライス 79.2%
3位 ポークカレーライス 77.0%
4位 シーフードカレーライス75.5%
5位 ドライカレーライス 73.0%
6位 ビーフカレーライス 70.0%
7位 チキンカレーライス 63.0%

野菜カレーは、ポーク、ビーフ、チキンを抜いて、人気が高いことがわかります。
夏の食卓では、肉が主役のカレーよりも、野菜が中心のカレーのほうが、家族から喜ばれているようです。

それでは、この時季の野菜カレーとは具体的にはどんなものなのでしょうか?
まず、材料としては、カレーを作るときの定番野菜である、たまねぎ、じゃがいも、にんじんが入ります。さらに夏野菜の代表である、トマト、なす、ピーマンなども加わります。
そして意外かもしれませんが、野菜カレーといっても肉が入っていることがほとんどです。肉の種類は豚薄切り肉や豚ひき肉、合いびき肉が目立ちます。肉類を入れないとだしが出ない、コクが出ない、ボリュームが出ない、などというのが理由でしょうか? それでも作り手にとっては、たとえ肉が入っていても、今夜のカレーの主役は野菜、ということなのでしょう。
この時季の食卓に登場する、野菜カレーのオーソドックスな例をご紹介しましょう。

★42歳
8月21日(火)

<野菜>
じゃがいも
たまねぎ
にんじん
トマト
なす
ピーマン
<肉>
豚薄切り肉
<調味料>
菜種油
天然塩
洋風コンソメ・ブイヨン・フォンドボー
ミネラルウォーター
固形カレールー

このモニターは6人家族。40代のご両親と、15歳の高校生を頭に、中学生、小学生、4歳の幼児という家族構成です。この日は、お母さんは仕事を終えて大急ぎで食事を作った様子で、野菜カレーの他には、トマトとミネラルウォーター、麦茶だけの食卓です。それでもカレーの中には旬の夏野菜も加えた6種類の野菜が入っています。そして、豚肉も加わってボリュームもアップさせています。蒸し暑い夏の日の夕食には、こんな風に一皿でさっと食べられる食事が子供たちからは歓迎されるのかもしれません。メニュー数は少なくても、家族6人がそろった食卓は、にぎやかで楽しいものだったことでしょう。

また、野菜カレーの作り方に、興味ある特徴があることに気づきました。
使用食材数は、年齢が高いほど多くなっている、ということです。
それには、野菜の使用種類数の違いが影響しているようです。

〈野菜カレーに使用した食材数〉
20代4.5品   (内)野菜1.7品
30代5.3品   (内)野菜2.6品
40代6.9品   (内)野菜3.0品
50代8.4品   (内)野菜4.2品
60代11.8品  (内)野菜6.2品

使用した野菜が9種類、という主婦の食卓をのぞいてみましょう。

★54歳
9月4日(火)

<野菜>
じゃがいも
だいこん
たまねぎ
にんじん
にんにく
トマト
なす
ピーマン
しめじ・ほんしめじ
<肉>
豚挽き肉
<調味料>
固形ルー
顆粒カレールー

カレーの定番野菜と夏野菜のほかに、大根ときのこまで入っているではありませんか! 和風に煮ることが多い大根を、カレーに入れてしまうのが面白い発想ではないでしょうか? このときの食卓にはミックス野菜サラダが添えられていて、その材料は、セロリ、レタス、たまねぎ、きゅうり、トマト、ツナ缶でした。この1回の食事で11種類の野菜を食べられることになります。この主婦は50代ですが、年代が高まるほど、積極的に野菜を取ろうとしている姿勢を感じます。

続いて、さらに上を行く60代の主婦モニターのカレーをご紹介しましょう。

★62歳
8月20日(月)

<野菜>
セロリ
じゃがいも
しょうが
たまねぎ
にんじん
にんにく
オクラ
トマト
なす
ピーマン
しめじ・本しめじ
<肉>
豚挽き肉
<調味料>
その他のサラダ油
バター
料理用日本酒
洋風コンソメ・ブイヨン・フォンドボー
中濃ソース
トマトケチャップ
黒こしょう
カレー粉・カレーパウダー

使用した野菜はなんと、11種類。さらに驚くのは、サラダ油以外に調味料やスパイスを7種類も使っていることです。味付けをカレールーだけに頼らず、自分なりの隠し味を追加しているのはどの年代でも見られますが、特に50・60代の作るカレーはオリジナルな味付け、工夫が感じられます。
この60代の主婦の作ったカレーは、カレールーは一切使用しないで、カレー粉で作っている本格派です。市販のカレールーを使って作ると、適度なとろみがつきますが、カレー粉だけで作った場合はサラッとしたスープ状のカレーに仕上がったはずです。
そういえば、北海道の札幌が発祥で人気上昇中の「スープカレー」は、大ぶりに切られた野菜がごろっと入っていて、汁はサラサラ、スパイシーなのが特徴です。この60代の主婦はその流行を自分の作るカレーに取り入れているのかもしれません。
なんにせよ、暑くて食欲が減退する時期、どろっとした重たいカレーよりもサラッとしたスープカレーのほうが食べやすくてお勧めかもしれません。

それでは最後に、人気のカレー専門店の野菜カレーのレシピをご紹介します。
神保町にある「サフラン」というお店の野菜カレーは、そばつゆが隠し味で、大根などの野菜もたっぷり入ったヘルシーなカレーです。八角とクミンの2種類のスパイスを加えるのもポイントです。

「サフラン」の野菜カレー
〈材料〉
バター       20g
チキンコンソメ   大さじ1
カレー粉      大さじ1
固形のカレールー  適量
そばつゆ      40ml
水         2L
八角        2個
クミン       中さじ1
にんにく、しょうが 各1かけ
豚肉        100g
大根        1/2本
じゃがいも     2個
にんじん      1本
たまねぎ      1/2個
しめじ       1/2パック
A(なす1本、ピーマン・赤ピーマン・かぼちゃ 各適量)

〈作り方〉

  1. 大根は厚めの半月切りに、にんにくとしょうがは千切りにする。そのほかの野菜は適当な大きさに切る。 〈Aの野菜は素揚げしておく。またじゃがいもは煮崩れを防ぐためあらかじめ煮ておくのがポイント〉
  2. 鍋にバターを入れ、にんにくとしょうがを炒め、豚肉を入れる。
  3. 2にたまねぎを入れ、しんなりしてきたら大根とにんじんをいれさらに炒める。
  4. 炒め終わったら、そこに水と八角とクミン、チキンコンソメを入れ、30分ほど煮る。
  5. 具財が煮えたら八角とクミンを取りのぞき、そばつゆとカレー粉、そして固形のカレールーを入れる。
  6. とろみがついてきたら、しめじとじゃがいもを入れる。
  7. 器にもり、あらかじめ素揚げしておいた野菜を飾ってできあがり。

* 八角とクミンは市販の茶葉専用パックに入れると取りのぞきやすい。

食に関するコラム 食卓双眼鏡の一覧に戻る

ページトップへ戻る