目からウロコが落ちる話

目からウロコが落ちる話

弊社前会長、齋藤隆による食に纏わることを綴ったコラムです。

第28回 シングルス市場の真実 ~パート3~

シングルスが夕食の際、外食する機会の比率は何割くらいだと思いますか?

答え 男性33.8% 女性18.3%
注)シングルス食MAPモニター358人の11月の夕食の飲食機会(8787回)に占める外食店で飲食した機会数の割合

「予想より少ない」と思った方が多いのではないでしょうか? では朝食と昼食ではどうでしょうか?

答え 朝食 男性 11.4% 女性 3.1%
昼食 男性 46.8% 女性 24.6%

これまた少ない!特に昼食は、意外な結果です。シングルスのほとんどが職業を持っているか学生です。当然に昼間は外で活動しているはず...。
「なのに何故、外食比率が5割を下回ってしまう?」

その理由は2つあります。

第1は意外に自宅で食べる割合が高いという事実です。昼食を自宅で食べる機会数の割合は、11月で男性29.2%、女性32.2%です。
第2の理由は、持参弁当とコンビ二店などのテイクアウトが多いためです。

持参弁当で昼食機会   男性 5.7% 女性 24.6%
テイクアウトで昼食機会 男性 17.2% 女性 17.2%

オフィス街の「高い、まずい、サービス悪い」の外食よりテイクアウトで済ますシングルスは男女共に17.2%です。「コンビ二店=シングルス市場」といわれる理由は昼食需要あるといえます。前回、お話したシングルスの自宅利用の買い物では、意外にコンビ二店利用が少なかった結果とは対照的です。ちなみに夕食を自宅外でテイクアウトで済ます(オフィスなどで)機会も7%程度あります。

女性の持参弁当が24.6%という結果には驚かされました。経済的でヘルシーな持参弁当市場は大きな市場を形成しています。男性でも5.7%が持参弁当です。


話は変わりますが、夕食の際一番よく利用されている外食業態は何だと思いますか?

答え 居酒屋・スナック

夕食の際、居酒屋・スナックを利用する機会が外食全体に占める割合は、男性で16.3%、女性で25.1%です。居酒屋はもはや飲み屋ではなく飯屋です。それにしても男性以上に女性の居酒屋利用の割合が多い結果には驚きました。男性の利用割合が多いのはラーメン屋、そば・うどん店、ファストフード店です。これって想像するに残業の際の夕食場所です。男性は残業外食が中心なのです。ならば女性はご褒美外食なのでしょう。女性のほうが洋食料理店や和食料理店の利用が多いのもそのためです。
ところで、最近、不人気の代表のように言われているファミリーレストラン利用は男性と女性ではどちらが多いと思いますか?

答え 夕食 男性 13.9% 女性 7.1%
昼食 男性 4.5% 女性 4.1%
注)外食店利用に占める割合(機会数)

シングルス女性がファミリーレストランを敬遠しています。
「女性の近づかない食べもの屋はつぶれる」。こんな諺もあります。
「オデキと食べもの屋は大きくなるとつぶれる」


話はまたまた変わります。

シングルスが夕食を摂る際、自宅で食べるより外で食べる機会が多い料理の一番は何だと思いますか。

答え
1位 ハンバーガー(11月の夕食、自宅で食べた割合11.7%)
2位 しゃぶしゃぶ(同18.2%)
3位 牛丼(同19.3%)
4位 フライドポテト(同19.8%)
5位 天丼(同21.1%)
6位 焼肉(同22.0%)
7位 焼き鳥(同25.7%)

ファストフード店と居酒屋の料理ばかりです。ファストフードといえばフライドチキンがベスト7に入っていません。調べてみました。フライドチキンが自宅で食べられる割合は何割だと思いますか?

答え 54.4%

ケンタッキーはテイクアウト中心になっているのでしょうか? これって外食業態としては、少し考えものです。


話しが変わって、自宅で食べられる割合の高い料理は何だと思いますか?

答え
1位 納豆(同97.5%)
2位 玄米ご飯(同92.1%)
3位 チキンクリームシチュー(同91.8%)
4位 かぼちゃの煮物(同90.6%)

納豆と玄米ご飯はなんとなく納得がいきます。しかしチキンクリームシチューやかぼちゃの煮物を、シングルスは何故に自宅で食べることが多いのでしょうか。その謎は現在解明中です。因みに自宅でかぼちゃの煮物を夕食に出した際、惣菜のかぼちゃの煮物を利用した割合は25.2%です。ということは残りの 75%は手作りしている勘定になります。この結果は重要なことを示唆しています。
チキンクリームシチューやかぼちゃの煮物を外食メニューとして提供する際の最大の強敵は、他の外食店のメニューではなく、シングルスの手作りだということです。シングルスの腕前に劣る料理が外食でうけるわけがありません。

今度は外食メニューの人気度に迫ってみましょう。そこで質問です。11月の一ヶ月、外食店で食べた料理の中で一番人気のあった料理は何でしょう。
注)シングルス食MAPでは外食、内食を問わず、食べたメニューの満足度を毎食卓質問しています。

答え
1位 うな丼(満足した割合93.1%)
2位 レバーと野菜の炒め物(同93.0%)
3位 豚肉と野菜の中華風炒め物(同87.9%)
4位 和風鍋(同87.7%)
5位 焼肉(同87.5%)

皆さん納得していただきましたか?
人気メニューで気になることがあります。先ほどのファミリーレストランのの人気の低迷です。かつてファミリーレストランの覇者であった「すからーく」が 200店の店舗を閉鎖するというニュースが出ました。閉鎖したすかいらーくの多くを低価格レストラン「ガスト」に業態転換するらしいというニュースも出ました。かつての中産階級家族の憧れの的だったすかいらーくの閉店に、多くのファンが失望している話も聞きます。
そこでファミリーレストランの人気が何故落ちたかを、シングルス食MAPで調べてみました。その結果が図表です。

top_column_28_1.jpg

横軸はシングルスがファミリーレストランで食べたメニューの回数を示しています。縦軸はそのメニューを食べた後の満足度です。シングルスの食べる回数が多く、満足度も高いハンバーグはファミリーレストランの顔だということがわかります。やはりハンバーグはファミレスの星なのです。
問題は野菜サラダとコーヒー、ご飯です。この3つのメニューは、ハンバーグ同様、シングルスがファミリーレストランでよく食べるメニューです。しかし満足度が極端に低くなっています。数字は出していませんが、ファミリーレストランのコーヒー満足度は、ファストフード店のコーヒー満足度より低くなっています。それどころか自宅で飲むコーヒー(インスタントコーヒーが含まれる)の満足度よりも低いのです。そんなファミリーレストランだから、シングルス女性は敬遠しているのです。すかいらーくを「おしやべりガスト」に転換するらしいですが、まずはコーヒーを美味しくすることが肝心です。
メインディッシュに満足してもサイドディッシュに満足できないことが、ファミリーレストランの人気の無さが大きな原因です。美味しいコーヒーと美味しいご飯が食べられるファミリーレストランが、人気回復の秘訣でしょう。それに美味しいサラダが付けば大満足間違いなしです。何も低価格業態に転換する必要はありません。
図表の左上に、満足度の高いメニューだが、まだまだシングルスに食べてもらえていないメニューがあります。例えばドリアやビーフカレーです。こうしたメニューの積極的提供の工夫は、ファミリーレストランの魅力の幅を広げるでしょう。
左下の領域は、魅力的な商品開発が必要なメニュー領域です。例えば美味しい味噌汁を開発するとファミリーレストランの人気はさらに高まるでしょう。八丁味噌を使った「赤だし」はいかがでしょうか? 味噌汁の実は、アサリか海苔ではないでしょうか? なんだか寿司屋の椀物になってしまいました。


追伸1
猫の目のように変わる外食店のメニュー開発について是非知って欲しい事柄があります。
それは本シリーズの2回目「凡なる非凡」でお話したことです。再び載せておきます。
前略...
私が住処の近くにある馴染みのレストランから客足を増やすための相談がありました。『新しいお客さんを呼びこむために、新しい料理をどれくらい作れば良いのでしょうか?』...と。
でも...、ちょっとまってください。
私達は少し、目先の新しさばかりに目を奪われすぎてはいないでしょうか? そのために大切なことを忘れていませんか? 料理とは一体、何でしょうか?
誤解を恐れず言わしてもらいます。
「料理とは食材の特質を活かした生きる営みの技です」
「理を料る」がそのことです。
ということは何も珍しい料理でなくて良く、馴染み料理で十分なのです。最近は、奇を衒う料理が多すぎるように感じます。ありきたりの味噌汁料理でも、季節の素材の特質を上手に活かした味噌汁を作れば、十分に料理上手になれます。等身大の食卓の豊かさです。

ここで問題です。私達の食卓で、以下の野菜が一番良く使われる料理をあててください。
大根、人参、なす、長ネギ、たまねぎ、じゃがいも、サトイモ、こまつ菜、絹さやえんどう

答え 全て味噌汁

この答え、意外だと思う方が多いでしょう。野菜といえばすぐに頭に浮かぶのがサラダや野菜の煮物です。とくにレストランのシェフや割烹の料理人たちはそんなこだわり野菜料理をアピールしています。しかし、私たちの普段の食卓では、野菜をとる一番の料理は味噌汁なのです。味噌汁には家族に野菜をとってもらおうという主婦(夫?)の愛情がこもっています。その工夫は昔も今も変わりません。味噌汁が「お袋の味」といわれる由縁がこんなところにあるのです。普段使いのメニューにこそ、人の心が反映なされるものです。
大分以前のことですが、舞台俳優の吉田日出子さんと懇談する機会を得ました。その懇談会で吉田さんがいった言葉が印象的でした。
「役者というものはあまり奇を衒ってはいけません。飛んだり跳ねたりをしすぎると観客は白けてしまいます。だからといって平凡な演技もいけません。観客が眠ってしまいます。大切なことは平凡な演技の中に、観客をあっと思わせる伎を忍ばせることです。すると観客は感動し、共感します」
今の料理が一番に忘れていることです。凡なる料理に忍ばせる非凡な心と技です。


追伸2
2月24日(火)にシングルス食MAPに関するセミナーを開催します。豊富なデータをもとに、これまで全くの未知だったシングルス市場の全貌が明らかになります。詳細は こちら をご覧下さい。

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